日本大百科全書(ニッポニカ) 「川会所」の意味・わかりやすい解説
川会所
かわかいしょ
近世の街道で、橋や渡船の設備のない大井川、安倍(あべ)川、酒匂(さかわ)川などで、川越(かわごし)の事務を行った役所。東海道の川会所は、宿場の問屋場と同じく幕府道中奉行(ぶぎょう)の支配下にあり、会所の役人は、大井川川会所では、取締、川庄屋(しょうや)、年行事頭取(としぎょうじとうどり)、年行事小頭(こがしら)がおり、その下に実際に業務を行う川越人足がいた。酒匂川では、1789年(寛政1)幕府道中奉行より、夏秋の季節で仮橋のない期間は歩行渡しとなるが、旅人が直接川越人足と交渉して川越を頼むので、手間どって渋滞し、賃銭も不同で不当な渡し賃をとる者もいるとして、今後は川会所がすべてを取締り世話するよう命ぜられている。川会所の費用は、川越賃銭の刎銭(はねせん)による場合、伝馬宿(てんましゅく)費用から出す場合などがあった。
[川名 登]
『田村栄太郎著『江戸時代の交通』(1970・雄山閣出版)』