役所(読み)ヤクショ

デジタル大辞泉 「役所」の意味・読み・例文・類語

やく‐しょ【役所】

役人公務を取り扱う所。官公庁
戦陣で、各将士が本拠とする詰所
「己が―に走り入り、火を懸けて腹掻き切って死ににけり」〈太平記・二八〉
中世関所のこと。〈黒本本節用集〉
遊里で、遊女の出る張り見世
「昨日は風邪の心地にて―をも引き居りしままっさ」〈滑・浮世床・初〉
[類語](1官庁官公庁官憲お上政府行政府政庁政権内閣台閣官府官衙かんがかんくにおおやけ

やく‐どころ【役所】

その人にふさわしい役目。「役所をわきまえた人」
与えられた役目。
[類語]役目役割お役役回りひと役

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「役所」の意味・読み・例文・類語

やく‐しょ【役所】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (やく)を課せられた所。賦役(ぶやく)を負担する地域。
    1. [初出の実例]「若張。於路次。致狼藉之由有其聞」(出典吾妻鏡‐弘長元年(1261)二月二五日)
  3. 役人が公務を取り扱う所。現在は、国家や地方自治体の事務を取り扱う所。官庁。官署。役場
    1. [初出の実例]「青砥左衛門のやく所へうったへいでける」(出典:黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)下)
    2. [その他の文献]〔宋史‐王能伝〕
  4. 戦陣で、各将士の本拠とする詰所。軍務を処理する所。
    1. [初出の実例]「寄役所自由合戦事」(出典:近衛家本追加‐弘安七年(1284)一一月~八年一一月)
  5. 中世、関所の異称。〔文明本節用集(室町中)〕
  6. 遊里で、遊女の出る張見世をいう。
    1. [初出の実例]「折節見世(ヤクショ)へ出る小袖も、同じ物はせつなく」(出典:洒落本・水月ものはなし(1758)中)
  7. 検番の事務所。
    1. [初出の実例]「見番いかめしく芸者役所とかいつけし方灯(あんどう)を出し」(出典:洒落本・中洲の花美(1789)小通登楼)

やく‐どこ【役所】

  1. 〘 名詞 〙やくどころ(役所)
    1. [初出の実例]「世間を憚かった様子で顔を隠してゐます役(ヤク)どこが気に入らないだらうとは察しますが」(出典:漫談集(1929)節劇といふもの〈大辻司郎〉)

やく‐どころ【役所】

  1. 〘 名詞 〙 その人にふさわしい役。適した役目。ちょうどいい役柄。また、振り当てられた役、役目、役割。
    1. [初出の実例]「所謂ボケといふ役どころで、曾我廼家蝶六といふ名優の行き方に似たものである」(出典:苦笑風呂(1948)〈古川緑波〉ロッパ放談)

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普及版 字通 「役所」の読み・字形・画数・意味

【役所】えきしよ

役作所。

字通「役」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の役所の言及

【役柄】より

…これがさらに細分化し,立役から荒事(あらごと)師,和事(わごと)師,実事(じつごと)師,捌き(さばき)役,辛抱立役など,敵役から公家(くげ)悪,色悪,実敵,半道敵,叔父敵など,女方から片はずし,赤姫,娘方,世話女房,老女方,女武道などが作り出された。近代では,これら〈役どころ〉に相当するものをも役柄と呼ぶようになった。 なお,西洋の演劇にもこのような〈役柄〉的要素は存在している。…

※「役所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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