日本大百科全書(ニッポニカ) 「幼葉態」の意味・わかりやすい解説
幼葉態
ようようたい
aestivation
植物の芽の中で幼葉が示す形態(芽(が)内形態)をいう。普通、幼葉態のタイプを知るためには、芽を横断して個々の幼葉の巻き方、相互の位置関係を調べる。このうち、相互の位置関係については、幼葉相互の重なり合いと葉序が問題となるが、いずれも成熟時の形態と関係のあることが多い。とくに重なり合いについては、花芽の中における幼い萼片(がくへん)相互、幼い花弁相互の重なり合いの問題がある。これは開花したときの萼片や花弁の重なり合いと関連するもので、葉縁の一方が他の葉の片方を覆い合うもの(瓦(かわら)状)、互いに内外の関係なく接し合うもの(扇状)など、さまざまなタイプがある。ただし、萼片や花弁についてはaestivationとは別のvernationという用語が用いられることが多い。
幼葉態の問題として注目されやすいのは、芽の中における個々の幼葉の巻き方である。幼葉の巻き方にはさまざまなタイプがあるが、葉の上の面を内側にして片方の葉縁から巻物のように巻いている片巻き(ササの類)、葉の中央脈のところで上面を内側にして折れる形となる二つ折り(サクラの類)、両縁から上面を内側にして巻いている内巻き(ツユクサ)、両縁から下面を内側にして巻いている外巻き(サツキ)、ワラビ、ゼンマイのように葉の先端から葉の上面を内側にして巻いているワラビ巻きなどがある。いずれの場合も、成熟したときは、展開して平面となるのが普通である。
[原 襄]