日本大百科全書(ニッポニカ) 「広域重要事件」の意味・わかりやすい解説
広域重要事件
こういきじゅうようじけん
社会的影響の大きい凶悪または特異な事件で、二つ以上の都道府県の区域にわたって広域的組織捜査を必要とする事件をさす。現今における交通手段の著しい発達、これに伴う移動性の増大と生活範囲の拡大などの条件は、犯罪のあり方にも大きな変化を及ぼした。すなわち、自分の居住地から遠隔の地で犯罪を行ったり、犯行場所から遠隔地へ逃走するといったことが多くみられるようになっている。警察署管轄や都道府県の境界を越える、いわゆるボーダーレス犯罪は著しく増加し、旧来の捜査態勢では対応できず、これに応じて警察庁では1964年(昭和39)に「広域重要事件特別捜査要綱」を制定し、また1980年には「広域重要凶悪事件捜査の強化について」の通達を出した。広域重要事件には指定事件のほか、登録事件、認定事件が含まれる。
1984年のグリコ・森永事件、1987年から1988年にかけての兵庫・静岡での朝日新聞社襲撃事件、1988年から1989年にかけての埼玉・東京の幼女連続殺人事件、1986年から1991年(平成3)にかけての千葉・福島・岩手誘拐殺人事件、2002年のマブチモーター社長宅ほか東京・千葉連続殺人放火事件などは、いずれも警察庁広域重要指定事件であった。このような事件の捜査にあたっては、特別な編成をもつ複数の警察署のブロック捜査、複数の都道府県警察の共(合)同捜査などが組織される。1994年の警察法改正では、合同捜査に関し、警視総監または警察本部長の協定により関係都道府県警察の指揮権の一元化が可能となった。また広域捜査隊が法的根拠を与えられ、2008年の時点で全国13区域に設置されている。
[岩井弘融]