広瀬絣(読み)ひろせかすり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「広瀬絣」の意味・わかりやすい解説

広瀬絣
ひろせかすり

島根県東部の安来(やすぎ)市広瀬町で生産される木綿絣。創始は文政(ぶんせい)年間(1818~1830)ごろから農家副業として地機(じばた)を用いて織られ、明治期には盛んとなり、明治末年には年産10万反といわれたが、1915年(大正4)の大火以後は急速に衰退した。第二次世界大戦以後、わずかながら復興をみていて、民芸的生産が行われている。絵絣が中心で、その多くは緯(よこ)絣。倉吉絣などの山陰絣と同じく、絣糸を絵台と緯綜台(よこへだい)に張り渡し種糸をつくり、絣つくりをする技法による。

[角山幸洋]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

事典 日本の地域ブランド・名産品 「広瀬絣」の解説

広瀬絣[染織]
ひろせがすり

中国地方、島根県の地域ブランド。
安来市広瀬町で製作されている。江戸時代後期の1824(文政7)年、米子で絣の染織法を学んだ長岡貞子によって広められた。広瀬絣の特徴は、大柄絵模様。絵模様と幾何模様を組み合わせ、正藍染にして手織りでしっかりと織りあげる。正藍一色に濃淡があり、洗うほどに風合いを増す。島根県ふるさと伝統工芸品。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

世界大百科事典(旧版)内の広瀬絣の言及

【広瀬[町]】より

…主産業は農業で,タケノコ,シイタケ,梨の栽培,乳牛や和牛の飼育などが行われる。文政年間(1818‐30)に長岡貞が米子絣の技法を使って始めた広瀬絣は,明治後半の最盛期には全国へ販売されていたが,1915年の大火により衰退した。富田城跡(史)がある月山は県立自然公園に指定されている。…

※「広瀬絣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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