引付・引着(読み)ひきつける

精選版 日本国語大辞典 「引付・引着」の意味・読み・例文・類語

ひき‐つ・ける【引付・引着】

[1] 〘他カ下一〙 ひきつ・く 〘他カ下二〙
① 付着させる。くっつける。つける。ひっつける。
源氏(1001‐14頃)松風「小鳥しるしばかりひきつけさせたる荻の枝など」
② 手元に引き寄せる。近くに寄せる。近づける。
今昔(1120頃か)二八「其の後、国の目代として、万の事を知せて、引付て仕けるに」
職務等を他人に移管する。
金沢文庫古文書‐(年未詳)(鎌倉)二月二日・兼雄書状(五五六)「久米郡寺用事、替文付候者、忩々、可付政所頭左衛門入道候也」
④ 証明する。証拠だてる。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)張湯第二九「罪の条々をかきつけて、ひきつけひきつけして責るぞ」
⑤ 誘って近づける。誘い入れる。
咄本醒睡笑(1628)一「かの兵法者に弟子共あまた引き附けたり」
⑥ 手元に引き寄せて動けなくする。
※歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)二番目「懐剣を持ったるおまさ実は七綾を引付(ヒキツ)けゐる」
⑦ (「惹付」とも書く) 魅力で誘い寄せる。魅惑する。
破戒(1906)〈島崎藤村〉一五「何となく人の心を嫵(ヒキツ)ける樸実なところがあった」
⑧ もってきてそれに当てはめる。
明治の光(1875)〈石井富太郎編〉二「銘々の身の上に引付けて見ると」
[2] 〘自カ下一〙 痙攣(けいれん)を起こす。多く小児のひきつけを起こすのにいう。
※読本・昔話稲妻表紙(1806)二「いとおもき皰瘡(もがさ)にて、熱気つよく目をひきつけて」
和解(1917)〈志賀直哉〉七「祖母や母は赤児がひきつけた位に驚いて」

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