遊女屋の道路に面した格子つきの部屋(見世)に,遊女が並んで客を待つこと。客は格子の間から眺めて好みの遊女を選んだ。客と遊女は,格子をはさんで会話を交わし,遊女は素見(ひやかし)/(すけん)(見て歩くだけで登楼しない客)にも〈すいつけ煙草〉をふるまうことがあった。張見世をするのは通常,夕刻6時から夜12時までであった。開店の合図があると,それまでに化粧をすませて盛装していた遊女らが2階から下りて見世に並ぶ。このときに三味線の〈菅搔(すががき)〉を弾奏した。張見世に出る順序や並び方は時代や店によって違うが,客に遊女の等級(揚代)を知らせるため,扮装のほかにも敷物の有無や座る位置でわかるようにくふうした。揚屋制では張見世はなく,揚屋制の発達した大坂で店頭に出るのを〈てらし〉という。なお,明治中期ごろから張見世に代わって,娼妓(しようぎ)の顔写真を店先に掲出した。外国の売春街に現在も残る〈飾り窓〉は張見世の一種といえよう。
執筆者:原島 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
遊女屋の入口わきの、道路に面して特設された部屋に、遊女が盛装して並ぶこと。もとは店先に立って客を引いたものが、座って誘客するために考案された方法であろう。したがって客を誘うための行為であるが、遊客が遊女を選定するのに便利なように、座る位置や衣装で遊女の等級や揚げ代がわかるようになっていた。各遊女屋では上級妓(ぎ)を除く全員が夕方から席について客を待ち、客がなければ夜12時まで並んでいた。江戸吉原では、張見世を見て歩く素見(ひやかし)客が多かった。明治中期から東京ほか地方の遊廓(ゆうかく)でも廃止され、かわりに店頭に肖像写真を掲げた。アムステルダムやハンブルクの「飾り窓の女」は、これの海外現代版である。
[原島陽一]
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