放射線治療における照射技術法の一つ。略称IMRT。従来の放射線治療における治療計画は、ビームの数、方向、形状、線量配分などを計画者があらかじめ決定し、得られた線量分布や腫瘍(しゅよう)および正常組織に照射される体積や線量を確認し、少しずつ修正を加えながら正常臓器の耐容線量を遵守できる治療計画を実施する順方向計画(forward plan)であったが、作業が煩雑であり、満足する治療計画を得るまでに要する時間も膨大であった。また、作成された治療計画が最適であるかどうかの判断もむずかしかった。
これらの問題を解決する新しい治療計画法として、標的や問題となる正常臓器の最大および最小線量や許容体積などの線量制約を入力し、コンピュータに治療計画の最適化を行わせる逆方向計画(inverse plan)で作成された治療計画に基づく放射線治療が強度変調放射線治療(IMRT)である。IMRTでは、これまで均一であったビーム内の照射強度に変化を与えることで、体内での線量分布は、とくに高線量で照射される範囲を、正常臓器を避けるように形成することが可能となった。とくに、病変が複雑な形状である場合や正常組織と隣接している場合に有用であり、高線量で照射される領域を病変の形状に一致させ、正常臓器への照射を避けることで、放射線治療に伴う副作用を軽減させ、同時に病変に確実に照射することで腫瘍制御を改善することができる。
日本では2008年(平成20)に保険適用となり、多くの施設でIMRTの実施可能な機器が導入されたが、その実施には専門的な精度管理と検証作業に基づく治療の質と安全の確保が必要とされるため、一定の施設要件を満たした場合にのみ治療が提供できるように制限されている。とくに、複雑な治療計画を実際の治療に応用するためには、治療計画と実照射での患者体位、病変の位置などを正確に再現する必要があり、画像情報を基に高精度に照準位置を照合できる技術である画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy:IGRT)が必須である。現在は、複数のタイプのX線治療用IMRT専用装置が開発され、広く利用されている。また、IMRT技術は、陽子線、重粒子線による粒子線治療でも、スキャニング照射を用いることで臨床応用されている。
[石川 仁 2023年2月16日]
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