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放射線療法 ほうしゃせんりょうほう radiotherapy

翻訳|radiotherapy

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

放射線療法
ほうしゃせんりょうほう
radiotherapy

放射線が癌細胞に当たると,細胞は電気を帯びたようになり,栄養吸収や核酸の分裂増殖ができなくなってしまう。これを応用したのが放射線療法で,現在,X線,γ線,β線,中性子,陽子などが用いられている。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉の解説

ほうしゃせん‐りょうほう〔ハウシヤセンレウハフ〕【放射線療法】

放射線を患部に照射して治療する方法。癌(がん)などを対象に、X線γ(ガンマ)線電子線中性子線アイソトープ放射性同位体)などが用いられ、体外から照射したり、病巣内に密封小線源を挿入・刺入して照射したりする。放射線治療

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大辞林 第三版の解説

ほうしゃせんりょうほう【放射線療法】

放射線を用いて行う治療法。特に癌がんなどの悪性腫瘍しゆようが対象となる。放射線治療。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

放射線療法
ほうしゃせんりょうほう
radiation therapy

放射線を用いた治療一般をさす。1895年にドイツ物理学者レントゲン放射線の一つであるX線を発見したが、その翌年には子宮癌(がん)の皮膚転移に対してX線の照射が行われている。現在では放射線療法の大部分が悪性腫瘍(しゅよう)を対象としており、一部で良性腫瘍(おもに血管腫)や皮膚病などにも行われている。治療に使われる放射線には、X線やγ(ガンマ)線のような電磁波と電子線のような粒子線とがある。粒子線としては、近年になって質量の大きい速中性子線、陽子線、重イオン線(重粒子線)、負π(パイ)中間子線なども、治療に用いられている。なお、1960年代、70年代には中性子捕獲(捕捉)療法とよばれる原子炉を用いた熱中性子治療も行われた。1980年代になると中性子線利用は少なくなり、陽子線利用の施設が増えている。これらの放射線には、物質を通過する際に直接または間接に物質をイオン化する電離作用がある。一般に、物質を構成する原子は安定状態では電子と陽子の数が等しく電気的には中性であるが、これに放射線が当たると、電子を放出してプラスになったり、その電子が中性の原子に付着してマイナスになったりする。これを電離作用といい、この作用によって細胞死がおこる。すなわち、放射線が細胞内のデオキシリボ核酸(DNA)上または近傍を通過して電離作用がDNA鎖に及んだ場合にDNA鎖は損傷を受ける。DNAは二重構造であるから1本の鎖が切れても修復されるが、一度に2本とも切られると修復できず、DNAの遺伝情報は乱されて細胞分裂ができないものも出て、細胞死を招くわけである。
 放射線治療は病巣のみならず正常組織にも損傷を与えるので、正常組織の障害を最小限にとどめるか、または正常組織が耐えうる程度にして最大の治療効果をあげることが原則である。生命に危険を及ぼすほどの機能欠損に至ることのない、また外見を著しく損なうことのない最大線量を耐容線量といい、正常組織の耐容線量を腫瘍の致死線量で割ったものを治療比とよぶ。治療比が1以上のときは根治可能であるが、1以下ではその値が小さくなるほど根治が困難となる。悪性腫瘍のうち、放射線に対する高感受性群には精上皮腫、悪性リンパ腫があり、中等度感受性群には基底細胞癌、扁平(へんぺい)上皮癌、腺(せん)癌、また低感受性群には骨肉腫、悪性黒色腫がある。一方、正常組織で感受性の高いものはリンパ節、骨髄、精巣、卵巣、小腸で、次いで高いものに胃、水晶体、皮膚があり、中等度感受性のものは毛細血管、成長期の軟骨や硬骨で、かなり感受性の低いものに軟骨、硬骨、唾液腺(だえきせん)、肺、肝、膵(すい)、甲状腺、副腎(ふくじん)、下垂体があり、もっとも低いのは筋肉、脳、脊髄(せきずい)である。なお、腫瘍に効果的な線量を1回で照射すると、周辺の正常組織は多くの場合耐えられない。そこで何回かに分けて照射すると、正常組織が耐えられる線量範囲でも腫瘍を根治できる。これを分割照射という。[赤沼篤夫]

放射線治療装置

次のようなものがある。
(1)治療用X線装置 これには表在治療用X線装置、X線深部治療装置、体腔(たいくう)X線装置などがあるが、悪性腫瘍に対しては現在ほとんど用いられていない。
(2)コバルト60大量遠隔照射装置 コバルト60(60Co)の線源1000~3000キュリーを容器に入れ、照射に際しては線源を照射位置まで移動させて、照射線束を腫瘍の大きさにあわせてから照射口をあけて照射する。
(3)ベータトロン 変動する強力磁場の中にあるドーナツ型の真空容器中で電子を加速し、電子線を取り出す装置である。
(4)リニア・アクセレレーター 直線状の真空容器中で電子を加速し、電子線を取り出し直接電子線を利用するか、またはX線に変換して治療に利用する装置である。線形加速器またはリニアック(ライナックlineac)ともよばれる。
(5)密封小線源 わずかな放射性同位元素(ラジオ・アイソトープ)を白金などの小さな容器に入れたものである。これにはラジウムの管や針、コバルト60の管や針、セシウム137の管や針、ストロンチウム90の照射器などがある。
(6)ガンマナイフ コバルト60γ(ガンマ)線治療装置の一種。照射ユニットの半球面上には201個のコバルト60線源が5列にわたって装填(そうてん)されており、各々のガンマ線が半球内の一点に集中するようにコリメート(放射線の入射方向等の制御)されている。小さな病巣、たとえば脳内の深い所にある血管腫等にガンマ線が集中するように設定すれば手術できない病巣も治療できる。ガンマナイフを利用した治療は定位放射線治療とよばれ、脳内の小さな病巣であれば開頭せずに治療することができる。
(7)サイバーナイフ ガンマナイフをX線で実現したもので、ガンマナイフより自由度が高く高等な照射技術が使えるようになっている。六つの関節をもつ腕(ロボットアーム)の先に小型X線発生装置(ライナック)が設置されている。100か所の照射ポイントがあり、各々のポイントから12の方向に照射でき、最大1200照射方向に照射可能である。精確な治療計画に基づいて照射方向や線量率が設定されて、頭蓋(とうがい)内に限らず体内の病巣に線量を集中して照射できる。照射ロボットともよばれ、患者設定などが画像に基づき自動で行われ、照射中の患者の動きなどに自動で追随する病変追尾システム(TLC:Target Locating System)を備えている。サイバーナイフを利用した治療は定位放射線治療以外にも利用できる。
(8)ノバリス ヘリカル治療装置ともよばれる装置で、小型X線発生装置(ライナック6MeV)がCTのようにガントリーの中を回転して、方向、大きさ、線量率などを制御しながら照射する(トモセラピーともよぶ)治療装置である。ライナックからのX線を利用してCT画像が撮られ、これに基づいて治療計画がなされ、患者設定も自動的に行われる。定位放射線治療を行うために開発されたが、自由度が高く一般の放射線治療にも利用されている。広範囲に照射可能であり、また複数のターゲットを同時に照射することもできる(「原体照射」の項参照)。
(9)陽子線治療装置 粒子線治療装置の一つ。一般にサイクロトロンが用いられる。陽子は水素の原子核であり、これをサイクロトロンに加速して取り出した放射線が陽子線である。陽子線にはブラッグピークがある。すなわち体表の入射部にはほとんど線量を与えず、ある一定の深さの所で全エネルギーを放出する。この位置に腫瘍がくるように陽子線のエネルギーを調整すれば、腫瘍以外の正常組織はほとんど照射されない。線量分布は大変好ましいが生物効果はX線と同じである。
(10)重粒子線治療装置 粒子線治療装置の一つ。水素より重い原子核をサイクロトロンやシンクロトロンで加速して取り出した放射線で照射治療を行う装置である。原子核が重いほど生物効果が大きくなる。水素の次に重い原子はヘリウムであり、これをサイクロトロンで加速して用いられたが、最近ではもっと重い原子核をシンクロトロンで加速して使われている。カーボンやシリコン、ネオン、アルゴン等である。放射線医学総合研究所のHIMAC(ハイマック)(Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba)とよばれているシンクロトロン治療装置は大型で、これらの原子核の放射線を取り出すことができる。しかし、あまり重い原子核を用いると生物効果比は落ちるし線量分布にも利点がなくなるので、現在ではカーボン核が用いられることが多い。[赤沼篤夫]

放射線照射方法

次の5種がある。
(1)外部照射法 体外より体内における病巣に対して放射線を照射する方法で、放射線の出口を固定して行う固定照射と、出口を動かして行う運動照射とがある。固定照射には、一方向から照射する一門照射と、いくつかの方向から照射する多門照射とがあり、一門照射は電子線による皮膚癌の治療などに用いられ、多門照射は病巣に放射線を集中して病巣内の線量分布を均等にする目的で使われる。このほか、照射方向を体深部に向けるのではなく、体表面をかすめるように照射する方法もあり、接線照射とよばれる。一方、運動照射には、全回転する回転照射と、振り角360度以下で円周上を往復させて照射する振り子照射とがある。
(2)腔内照射法 体腔内に密封小線源を挿入して照射するもので、線源としてはラジウム、コバルト、セシウムの管状のものが使われ、子宮癌、腟(ちつ)癌、上顎(じょうがく)癌などの治療に用いられる。
(3)組織内照射法 病巣内に直接放射性同位元素の小線源を刺入して照射する方法で、線源にはラジウム、コバルト、セシウムなどの針状のものが使われ、白金や金、ステンレス製の容器(針や管)内に密封されている。この容器によって、線源から出てくるα(アルファ)線やβ(ベータ)線が吸収され、γ線のみが放射される。また、病巣およびその周囲に均等な放射線が照射されるように、強さの異なる何本かの針状容器を局所麻酔下で病巣内部に刺し入れる。舌癌、口唇癌、皮膚癌、陰茎癌などの治療に用いられる。
(4)内用療法 放射性同位元素を内服して治療する方法で、甲状腺に集まるヨウ素131(131I)は甲状腺機能亢進(こうしん)症や甲状腺癌などに用いられる。すなわち、ヨウ素131を内服すると、ヨウ素は甲状腺組織に集まり、そこで放射線を出すので病巣が破壊される。
(5)中性子捕獲療法 原子炉を用いたエネルギーの比較的低い熱中性子照射治療である。ホウ素化合物をあらかじめ病巣に点滴等で取り込んでおき、熱中性子線を体外から照射する。ホウ素と熱中性子との核反応により発生する強力な粒子線(α(アルファ)線とリチウム線)により病巣が破壊される。隣接する正常細胞への影響が少ない優れた治療法であるが、熱中性子線を発生するためには原子炉が必要であるため対応できる治療施設は限られている。[赤沼篤夫]

放射線治療の実施

放射線治療を実際に行う場合には、次のようなことがチェックされる。
(1)放射線治療の適応があるかどうか。すなわち病巣の感受性と患者に放射線を受けるだけの体力があるかどうかがチェックされる。
(2)他の治療との組合せはどうするか。癌の治療には手術をはじめ、化学療法、ホルモン療法、免疫療法などもあり、これらと放射線療法との併用が検討されるが、とくに手術療法との組合せでは、術前、術中、術後のどの段階で併用するかがチェックされる。
(3)放射線の線源の種類およびその治療装置について、どれを選ぶかを検討する。
(4)照射野はどのようにするか、照射方法をどうするかを検討する。
(5)照射する放射線の総量と1回分の線量をどうするか、また1週間に何回照射するか。
以上のことがすべて決定してから実際の照射に入るが、照射期間中は患者の全身状態をつねに配慮しながら照射を続ける必要がある。[赤沼篤夫]

治療疾患

いくつかの疾患について具体的に述べる。[赤沼篤夫]
舌癌
手術療法と放射線療法、あるいは両者の併用療法が行われ、いずれも良好な成績が得られているが、治療効果と機能保存の点からは放射線療法が主流となっている。舌癌には組織内照射法が用いられ、腫瘍が比較的小さいときはラジウム針を1平面に配列する一平面刺入法を行い、腫瘍が大きくなれば2平面に配列する二平面刺入法や立体刺入法なども行われる。線量は1週間の刺入で60~70グレイである。[赤沼篤夫]
乳癌
まず外科療法が検討されるが、手術ができない場合には放射線療法が行われる。また、リンパ節転移がある場合には術後照射が積極的に行われる。これにより、局所再発の抑制および再発出現の遅延が認められる。照射は患側の胸壁、腋窩(えきか)リンパ節、鎖骨の上下窩リンパ節、傍胸骨リンパ節を含む部位に行われるが、肺および心臓に不必要な線量を与えないようにする。コバルト60のγ線、電子線などが用いられ、1回線量2グレイ、総量50グレイ程度を照射する。[赤沼篤夫]
(けい)癌">子宮頸(けい)
病気の進行度によって治療法が異なり、初期のものは手術と放射線のどちらでも治療効果にほぼ変わりがない。両者を組み合わせて行うことも多い。進行したものは放射線療法が主軸となる。治療法は、腔内照射によって子宮頸管部に十分な線量を照射し、周囲の浸潤や転移病巣に対しては外部照射を行う。普通、この二つの照射法を併用する。腔内照射には、子宮腔内の長軸に沿って直線的に線源を並べるタンデムと、タンデムに対して垂直に線源を保持して腟内に挿入するオボイドとよばれる容器が用いられる。管状コバルト60の1~3キュリーを用いる。挿入するときは、遠隔操作式後装填(こうそうてん)法が使われる。外部照射は、骨盤に対して対向二門照射で行われる。コバルト60のγ線で50グレイくらい照射される。[赤沼篤夫]
甲状腺機能亢進症
放射性ヨウ素131を内服する。摂取したヨウ素131は甲状腺に集まり、そのβ線が甲状腺を照射する。これによって、亢進した甲状腺機能が抑制され、正常に戻ることが期待される。β線の及ぶ範囲は2ミリメートル以下であり、周囲組織への影響はほとんど心配ない。治療線量は50グレイくらいである。[赤沼篤夫]
ケロイド
ケロイドが完全にできてしまってからでは放射線療法もあまり効果はない。ケロイド切除直後に照射すると、発生を防止することができる。表在治療用X線が用いられ、総量20グレイくらいである。[赤沼篤夫]
翼状片
原因不明の眼科疾患で、鼻側の球結膜がくさび状に角膜に侵入増殖していくものであるが、手術で除去しても再発しやすい。その再発防止のために放射線療法が行われる。術後にストロンチウム90のβ線照射を行うが、線量は約40グレイである。これにより再発はまれとなった。[赤沼篤夫]
『尾関巳一郎・松浦啓一編『新放射線医学』第2版(1980・南山堂) ▽梅垣洋一郎監修『ガンの放射線療法』(1980・自由国民社) ▽青木幸昌・赤沼篤夫著『放射線治療ガイドブック』(1992・医療科学社) ▽増田康治著『放射線治療技術』(2002・南山堂) ▽日本放射線技術学会監修、熊谷孝三編著『放射線治療技術学』(2006・オーム社) ▽日本放射線治療専門技師認定機構監修、保科正夫編『放射線治療技術の標準』(2007・日本放射線技師会出版会) ▽井上俊彦・井上武宏・手島昭樹著『放射線治療学』改訂3版(2007・南山堂) ▽渡部洋一他著『放射線治療科学概論――診療画像検査法』改訂版(2008・医療科学社) ▽西村恒彦・山崎秀哉他著『癌治療における放射線診療の展開――放射線治療・IVR・RI内用療法』(2008・金芳堂)』

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世界大百科事典内の放射線療法の言及

【癌】より

…乳癌に比較的多い。 放射線に感受性のある癌で,根治手術が困難であるか,臓器の機能を保持したい場合は放射線療法を行う。子宮頸癌,舌癌,咽頭癌,喉頭癌,肺癌など,扁平上皮癌や一部の肉腫が適応になる。…

【放射線治療】より

…放射線のもつ生物学的作用を利用して行う治療法。放射線療法ともいう。癌その他の腫瘍性疾患に対して行われるが,病的組織への破壊を最大にし,正常組織への障害を少なくするために,種々の方法や技術が駆使される。…

※「放射線療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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