強飯式(読み)ごうはんしき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「強飯式」の意味・わかりやすい解説

強飯式
ごうはんしき

神人饗応(きょうおう)の祭りの場で高盛飯を無理強いして食わせる作法をいい、その例は多い。神の御供(ごくう)はけっして粗末にしてはならぬと新婿の通過儀礼として強要する儀礼もある。しかし、普通、強飯式として知られるのは栃木県日光市輪王寺(りんのうじ)の強飯式である。同寺の三仏堂で毎年4月2日に行われ、「日光責め」ともいわれる。山伏姿の僧が黒塗りの椀(わん)に飯を盛り上げて出て、裃(かみしも)姿の頂戴人(ちょうだいにん)に向かって激しい口調で口上を述べ、飯と菜(さい)を強いるのである。菜は唐辛子、生大根、山椒(さんしょう)、蓼(たで)といったもの。

 同じ日光市でも七里の上野(うわの)の生岡(いくおか)神社の強飯式は素朴である。毎年11月25日に行われ、雑式(ぞうしき)装束を身にまとい頭に目籠笊(めかござる)をかぶった太郎坊・次郎坊に扮(ふん)する大人を、山伏・強力(ごうりき)に扮した子供が責めるのである。この行事は、強飯式、御飯食に案内申す、春駒(はるこま)と三つに分かれており、収穫祭と予祝を含んだ農耕儀礼の色彩を多分にみせていて甚だ興味深い。

[萩原秀三郎]

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百科事典マイペディア 「強飯式」の意味・わかりやすい解説

強飯式【ごうはんしき】

5月2日,日光輪王寺(りんのうじ)で行われる修験(しゅげん)道の儀式。かつては5月2日に行われていたが,現在は4月2日。大黒天弁財天,毘沙門(びしゃもん)天ならびに日光三社権現から社運隆盛の御供(ごく)を受ける古儀として続いている。山伏姿の4人の強飯僧が裃(かみしも)姿の4人の頂戴人に椀(わん)に盛り上げた二升飯などを強(し)いる。終わって,宝槌(ほうつい),福杓子(ふくじゃくし)等の縁起物が参拝者にまかれる。

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世界大百科事典(旧版)内の強飯式の言及

【一膳飯】より

…葬儀だけでなく婚礼でも〈鼻つき飯〉〈高盛り飯〉として一膳飯を出す所は多い。また日光輪王寺の〈強飯(ごうはん)式〉,京都北白川の天神宮の祭礼では,儀礼的に高盛りにした飯を食べる。絵巻物に散見されるところによると,中世くらいまでは飯を高盛りにしてそのまわりに副食の小皿を置く配膳法をとっていたようである。…

【強飯】より

…祝事にはアズキを加えて赤飯とし,不祝儀には白ダイズを加えるか,もち米だけの白蒸(しらむ)しを用いた。なお,栃木県日光の輪王寺で今でも毎年4月2日に行われる強飯式は高盛り飯を強制するもので〈ごうはんしき〉と呼ぶ。【鈴木 晋一】。…

※「強飯式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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