御器(読み)ゴキ

デジタル大辞泉 「御器」の意味・読み・例文・類語

ご‐き【御器】

《「ごうき(合器)」の音変化》
ふたつきの食器。特に、わんのこと。
「―なくてかはらけにてあるぞ見慣らはぬ心地する」〈讃岐典侍日記・下〉
修行僧などが食物を乞うために持つ椀。

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精選版 日本国語大辞典 「御器」の意味・読み・例文・類語

ご‐き【御器・五器】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 食物を盛るためのふたつきの器。特に、わん。木製、陶製、金属製などがある。
    1. [初出の実例]「宮の御台には、かねのごきに黄金の毛うち、銀(しろがね)の折敷三十」(出典:宇津保物語(970‐999頃)あて宮)
  3. 特に、修行僧や乞食が食物を乞うために持っている椀(わん)をいう。
    1. [初出の実例]「此こころ推せよ花に五器一具〈芭蕉〉」(出典:俳諧・葛の松原(1692))
  4. ごき(呉器)

御器の語誌

( 1 )「ごうき(合器)」の変化したものとされるが、「合器」という語は見えず、「器」に接頭辞「御」を加えたものかと思われる。
( 2 )「御器」は、漢籍では天子の道具をいい(新書輔佐「御器不度」)、日本でも皇室関係の人物のための器に対して用いられている(続日本紀‐大宝元年正月庚寅「直広貮已上者。特賜御器膳并衣裳。極楽而罷」)。しかし、「落窪物語」には更に敬語接頭辞を加えた「御ごき」の例があり、早く普通語と理解されたようである。
( 3 )中世以降には「呉器」「五器」と書かれた例が見える。やがて「ごき」は庶民の食器にも用いられるようになり、近世以降はの食器をいうようにもなった。

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食器・調理器具がわかる辞典 「御器」の解説

ごき【御器/合器】

食べ物を盛るためのふた付きの椀。
➁修行僧などが食べ物を乞うために持つ椀。

出典 講談社食器・調理器具がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の御器の言及

【天皇】より

…行幸は,このような教化で説かれた天皇の姿をみせる場であっただけに,全国巡幸を軸にその多くが87年までに集中していた。天皇が行幸の途次で休息や宿泊した場所は後に〈聖蹟〉とされ,その使用した器具類を〈御器〉とし,ともに保存した。かつ天皇がみずから植樹した樹木(おもに常緑樹)は〈御幸松〉などと称された。…

※「御器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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