汁や飯などを盛る食器で、陶磁器製のものは碗、木製のものは椀の字をあてたが、のちに、茶器から転用された飯用の陶磁器のものは茶碗とよばれるようになった。そのため、現在では椀といえば、木製の汁や飯を盛る食器のみに限定されている。歴史的には、土器の碗が始まりと考えられるが、木工の発達により、木をくりぬいて椀がつくられるようになった。加工を施さない椀は、かなり古くから用いられていたようであるが、使用上、限界があり、平安時代になると、漆塗りの技術が生まれ、木椀に漆加工が施されるようになった。そして、椀は、木製のものに漆塗りを施したものが中心となっていった。また、漆加工ができるようになると、椀の生地(きじ)の厚みも、薄く仕上げることが可能となり、さらに、模様などの加工も細かくなり、日常品であるとともに、芸術品としても発展することになった。
椀は、目的により、形態の異なるものが数多く存在する。汁椀では、みそ汁に使うもののほか、吸い物椀、汁粉椀など、また、汁の多い煮物などを盛る大ぶりの椀もある。
椀は、木製であるため、断熱性が高く、熱い汁物を入れても、口にもっていったとき、直接熱さを唇に感じさせない。したがって、熱いものを、熱さを楽しみながら味わうことができるとともに、中の料理、主として汁物などが冷めにくいという利点もある。
江戸時代の初めまでは、ほとんど木椀が料理の盛付けに用いられていたが、陶磁器による茶碗の発達とともに、木椀はだんだん少なくなり、汁椀や一部料理の盛付け程度に用いられているのが現状である。その理由は、漆塗りは手間と時間がかかるとともに、使用にあたって注意点があり、陶磁器のように簡便に使うと、はげたり、割れたりするといった点もあると思われる。それと、高価な点が、椀を少なくした理由とも考えられる。椀は漆塗りの産地ごとに特徴があり、独特の味わいを料理に与える利点がある。なお、近年は、プラスチック製のものや、木のかわりにプラスチックに漆を塗ったものなども出回っている。
『『和食器――盛り付け自由自在』(1997・同朋舎出版)』▽『神崎宣武著『図説 日本のうつわ――食事の文化を探る』(1998・河出書房新社)』
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…しかし当時,日本では磁器はつくられておらず,この場合の茶碗は中国から請来された磁器を意味していた。日本で焼かれた茶碗で早い時期のものといえば灰釉茶碗(坏(つき))や山茶碗(やまぢやわん)があげられるが,これらはむしろ飲食用の器であった。しかし日本では飲食用の器としては木製の椀(わん)が主流であり,そのために江戸時代に入るまで陶磁器の飲食用碗はあまりつくられていない。…
※「椀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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