御流（読み）おながれ

精選版 日本国語大辞典

お‐ながれ【御流】

1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 )
2. ① 貴人、主君から杯に飲み残した酒をいただくこと。また、その酒。また、貴人、主君からいただく酒。古くは、貴人、主君が、自分の杯に残った酒のしずくを他の器に移し、さらに酒を加えて臣下に与えた。
   1. [初出の実例]「お流や二つ瓶子にみつの春〈親盛〉」(出典：俳諧・桜川（1674）春)
3. ② 酒の席で、目上の人に敬意を表わすため、その人の飲んだあとの杯を受けて、酒をさしてもらうこと。また、そのようにして飲む酒。
   1. [初出の実例]「お近づきにお流れを一つ頂かせてくださいまし」(出典：今年竹（1919‐27）〈里見弴〉渡風流水)
4. ③ 目上の人などから、不用になったものをもらうこと。また、その品物。おさがり。おすべり。
   1. [初出の実例]「魚肉でも少し古ければ香をかいだ儘で口を付けない。そのお流れを〈略〉玉が頂戴する」(出典：備忘録（1927）〈寺田寅彦〉猫の死)
5. ④ 予定していた行事、会合などが中途でやめになること。さたやみ。中止。流会。
   1. [初出の実例]「でも、此間の半襟も、お流(ナガ)れになってしまったぢゃないか」(出典：二人女房（1891‐92）〈尾崎紅葉〉上)
   2. 「哲也が気霽(きばら)しの遠出を思ひ立ったのも気紛れなら、小夜子も固(もと)より行く気はなく、其はいつかお流になって」(出典：其面影（1906）〈二葉亭四迷〉五八)

出典　精選版 日本国語大辞典