日本大百科全書(ニッポニカ) 「微生物資材」の意味・わかりやすい解説
微生物資材
びせいぶつしざい
土壌改良資材の一つで、有用微生物群を各種の培養基質で繁殖させ、増量材や吸着材を添加したものである。政令で指定を受けているVA菌根菌のほか、堆肥(たいひ)化の促進、土壌団粒形成、窒素固定、リンの可溶化、連作障害抑制など土壌病害虫の軽減、植物ホルモン、ビタミンの生成など各種の効果があるとされる資材が数多く市販されている。微生物資材の効果はさまざまであり、単一の効果ではなく、総合的な効果を期待されて施されるのが特徴である。しかし、科学的に効果が確認されているものはそう多くはない。微生物資材として、初めて指定されたVA菌根菌は藻菌類の糸状菌であり、多くの陸生の草本植物や樹木に共生する。根の外側にのびた菌糸は、根の表面から離れた土壌から水分や養分を吸収し、それを宿主の植物が利用できるため、干魃(かんばつ)のときや養分の欠乏した土壌では、植物の生育が改善される。しかし、微生物資材が効果を発揮するには、接種した微生物が土壌中で増殖し、土着の微生物に打ち勝つ能力が必要であり、条件がととのわないと効果は期待できない。
[小山雄生]
『伊達昇編『便覧 有機質肥料と微生物資材』(1988・農山漁村文化協会)』▽『木嶋利男著『拮抗微生物による病害防除――微生物資材の使いこなし方』(1992・農山漁村文化協会)』▽『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会)』▽『鈴井孝仁・岡田斉夫・国見裕久・牧野孝宏・斎藤雅典・宮下清貴編『微生物の資材化――研究の最前線』(2000・ソフトサイエンス社)』