徳を以て怨みを報ず(読み)とくをもってうらみをほうず

故事成語を知る辞典 「徳を以て怨みを報ず」の解説

徳を以て怨みを報ず

うらみがある相手を憎まないで、逆に恩徳を施すこと。

[使用例] 岸は、終戦時、しょうかいせきが「怨みを報いるに徳を以てす」という精神により、大陸から日本の将兵文民が無事に帰国できたことを感謝した[福田和也*悪と徳と 岸信介未完の日本|2012]

[由来] 「老子―六三」の一節から。老子が主張する「無為(ことさらに何かをしようとしないことによって、すべてをうまく成し遂げること)」の一環として、「徳を以て怨みを報ず(うらみを晴らそうとするのではなく、徳を施すことで相手を自分の影響力の下に置く)」が挙げられています。なお、「論語―憲問」では、「徳を以て怨みを報ず」というのはどう思われますか、と問われた孔子が、「そんなことをしたら、徳に対しては何で報いればいいのか。うらみには正直さで報い、徳には徳で報いることだ」と批判しています。

〔異形〕怨みに報いるに徳を以てす。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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