改訂新版 世界大百科事典 「心エコー図」の意味・わかりやすい解説
心エコー図 (しんエコーず)
echocardiography
超音波を用いて心臓内各部あるいは大血管の運動を記録する方法で,UCG(ultrasound cardiographyの略)ともいわれる。1954年にスウェーデンのヘルツC.M.Hertz(1920- )らによって初めて報告されて以来,心エコー図法の発達は著しく,現在では循環器疾患の診断に欠くことのできない方法となっている。超音波とは周波数2万Hz以上の音であり,超音波のもつ,(1)直進性,(2)音響インピーダンスの異なる二つの媒質の境界面で反射される,という二つの特性を利用して,心臓の弁,壁,膜および大血管の形態と運動を分析することができる。本法には,一次元的に心臓内各部の運動を表現するM-モード法と,二次元的,すなわち心臓あるいは大血管を断層面でとらえる方法の二つがあるが,近年ではさらにこれらに加え,血流を波形表示するドップラー法が同時に行えるようになった。心エコー図法により,従来心臓カテーテル法など観血的診断法が必要であった先天性心疾患をはじめとするほとんどすべての心疾患を診断するにあたって,有力な情報を非観血的に提供できるようになった。また現在本法のみで十分診断あるいはその重症度判定が可能な疾患も少なくない。本法のもつ非観血的手法,簡便さ,正確さなどの長所から,本法は循環器病学の診断を行ううえで今後さらにその重要性が増すものと思われる。ただし,その反面,年長者,肥満者,肺疾患症例などでは十分良好な記録ができにくいという欠点もある。
→超音波画像診断
執筆者:椎名 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報