改訂新版 世界大百科事典 「超音波画像診断」の意味・わかりやすい解説
超音波画像診断 (ちょうおんぱがぞうしんだん)
ultrasonic diagnosis imaging
超音波を利用して生体内の状態(形態,動態,機能)を調べる検査法で,1980年代後半より,本格的に医療に使用されるようになった。使用される超音波の波長は1~10MHzで,腹部用には3.5~5.0MHz,体表面には7.5MHz程度を使用。出力は数十mW/cm2以下と低く,多くの装置はプローブ(接触子)に200個程度の圧電素子(ジルコン酸チタン酸鉛など)を用いて超音波を発生させている。放射された超音波は液体や個体を媒体として伝播し,媒体のもつ固有音響インピーダンスの異なる境界面で反射する。この性質を利用して画像を得る。距離分解能mm,方位分解能2mm程度。放射線のように人体に対する影響はなく,人体軟部組織の描出にはとくに優れているが,骨や空気を含む部位の描出は盲点である。X線透視のように生体内構造が実時間の動態画像として見られる。超音波ドップラー法では血流情報が得られる。装置は小型で可搬性も高く,安価である。内視鏡超音波装置では空気,骨の障害がある胸部大動脈,消化管領域の画像も見れる。また超音波造影剤(血液に気泡をふくませる)を使用して腫瘍の鑑別,心筋内灌流状況の可視化もされる。このように人体各部位の画像診断に使用されるが,画像の描出範囲が狭く操作には熟練を要する。
心臓などは肋骨に囲まれているため,肋骨の間や肋骨弓下などから検査をする。血液は超音波をほとんど反射しないため,心筋や弁組織は高いコントラストとして画像になり,先天性心疾患,弁疾患の形態診断ができる。またカラードップラーは血管内の赤血球の散乱による,周波数の変化から血流速度が得られる。
執筆者:金場 敏憲+蜂屋 順一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報