心サルコイドーシス

内科学 第10版 「心サルコイドーシス」の解説

心サルコイドーシス(その他の心筋症)

(3)心サルコイドーシス(cardiac sarcoidosis)
概念
 サルコイドーシスは全身諸臓器に類上皮細胞肉芽腫を形成する原因不明の疾患である.わが国の症例では,心病変の合併例が多い.心機能不全や心室性不整脈のため突然死,心不全死することがあり,死因としての頻度が高いため,心病変はサルコイドーシスの予後を左右する.わが国では中高年女性に高頻度である.ステロイドの有効性が示されていることからも,早期診断が必要である.
臨床症状
 症例の約1/3は心症候を欠く.眼症状のほか,全身症状として皮疹,咳,全身倦怠,発熱,関節痛などがある.サルコイドーシスの経過観察中に心電図異常や不整脈症状で気づかれることが多い.完全房室ブロックに対してペースメーカを植え込んで数年して本症と診断されることがある.心症状は,高度房室ブロックや心室性不整脈による症状と,心不全症状に大別される.
検査成績・診断
 他臓器にサルコイドーシスで以下に示すような本症に特有な心臓の異常が認められる場合に診断されることが多いが,心臓に弧発する例も散見される.
1)心電図:
頻度の高い心電図変化として完全右脚ブロック,左軸偏位,完全房室ブロック,頻発性心室期外収縮,心室頻拍がある.異常Q波もみられる.
2)心臓超音波:
壁運動異常,左室拡張,壁菲薄化,僧帽弁逆流,心膜液貯留,拡張障害などがみられる.病期が進むと拡張型心筋症様に変化する.病変は心室中隔基部や乳頭筋に多く観察される(図5-13-23).中隔基部に限局した壁運動異常,壁菲薄は本症を疑う根拠となる.まったく異常のみられないこともある.
3)心臓核医学:
ガリウム67Ga)(図5-13-23),テクネシウム(99mTc-PYP)で異常集積がみられる.陽性率は必ずしも高くないが,活動性を知るためにも必須の検査である.FDG-PET/CTで陽性像を認める(図5-13-23).
4)心内膜心筋生検:
類上皮細胞肉芽腫が認められれば診断が確定する(図5-13-23).肉芽腫がとらえられる頻度は約20~30%であり,診断感度は低い.心筋細胞肥大や変性,間質の線維化,浮腫などの非特異的な異常所見が高率に認められる.
5)血液検査:
アンジオテンシン変換酵素ACE)やリゾチームの高値がみられる症例がある.陽性率は必ずしも高くない.
治療
1)ステロイド治療:
ステロイドが予後改善に有効である.心機能が回復する症例もある.プレドニゾロン60 mg隔日,または30 mg連日より開始し,5~10 mgを維持量とする.難治例ではメトトレキサートなどの免疫抑制薬も使用される.
2)不整脈:
徐脈性不整脈が多く,永久ペースメーカの植え込みが行われる.心室頻拍は難治性で,アミオダロンを含む各種薬剤が無効な例には植え込み型除細動器を使用する.
3)心不全:
治療は一般のうっ血性心不全と同様である.両室ペーシングCRT)治療の対象になることも多い.欧米では心移植の対象疾患と考えられているが,本症は全身の諸臓器を侵す炎症性疾患であり,他臓器病変の検討が必要である.[磯部光章]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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