肉芽腫(読み)ニクガシュ(英語表記)granuloma

翻訳|granuloma

デジタル大辞泉 「肉芽腫」の意味・読み・例文・類語

にくが‐しゅ【肉芽腫】

《医学では「にくげしゅ」という》マクロファージなどの細胞が増殖して結節を形成したもの。体内に侵入した病原体などの異物をマクロファージが分解・排除できない場合に、異物を取り囲んで組織の中に閉じ込めることによって異物の作用を抑える、免疫反応の一つ。

にくげ‐しゅ【肉芽腫】

《医学用語》⇒にくがしゅ(肉芽腫)

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改訂新版 世界大百科事典 「肉芽腫」の意味・わかりやすい解説

肉芽腫 (にくがしゅ)
granuloma

〈にくげしゅ〉とも読む。処理しにくい物質を処理しようとする生体の反応によって生じた炎症性の腫瘤。腫瘍の本態が明確でなかったころに名づけられたので〈腫〉という語尾をもつ。病巣中心に組織球からなる結節があり,周囲を,一般の器質化組織である肉芽組織がとりかこむ組織構築をしており,定義上,肉芽腫とは中心部の組織球結節のみを指すとするものと,その周辺の肉芽組織をも含めるとするものと2者があるが,病変を特徴づけるのは,組織球からなる結節であり,時期によっては周りの肉芽組織を欠くこともあるので,病変の成立ちを論ずるうえでは,前者の立場が妥当である。この組織球性結節が類上皮細胞とよばれる形態的特徴を示す細胞からなるものは,類上皮細胞肉芽腫とよばれ,最も重要な肉芽腫である。肉芽腫をつくるものには,感染症(結核梅毒ハンセン病ブルセラ症トキソプラズマ症,猫ひっかき病,真菌症,住血吸虫症),金属中毒(ベリリウム,ジルコニウム),慢性リウマチ性関節炎(リウマチ結節),リウマチ熱(アショフ結節),異物,原因不明の疾患(サルコイドーシス,消化管のクローン病亜急性甲状腺炎),癌に随伴する肉芽腫などがある。類上皮細胞肉芽腫の形成には,細胞性免疫と細胞内寄生の形をとる特有な細菌の感染が関与するとされている。たとえば,一度,結核菌と接触した(感作された)生体では,再び結核菌に接触すると,菌はマクロファージの中に入り,ついでマクロファージによって処理された菌の抗原を感作T細胞が認識し,感作T細胞から,マクロファージ走化因子,活性化因子,遊走阻止因子などのリンホカインlymphokine(リンパ球が産生する免疫物質のうち抗体以外のものの総称)が放出されて,マクロファージがさらに活性化され,集積し肉芽腫が形成される。一方,活性化されたマクロファージの中では,結核菌の増殖は阻止される。結核の類上皮細胞肉芽腫の中心は,一般に,凝固壊死をおこして,チーズ様に軟らかくなり,乾酪壊死巣となっている。そのそばには,類上皮細胞の癒合によって生じたラングハンス型巨細胞が散見され,肉芽腫をとりかこむリンパ球,形質細胞,繊維芽細胞からなる器質化組織がある。類上皮細胞には細胞性免疫が関与するといわれてきたが,最近,結核菌のみならず,すべての細菌菌体に普遍的に存在するペプチドでアジュバンド効果の最も強力なムラミルジペプチドが容易に類上皮細胞肉芽腫をつくることが実験的に明らかにされ,しかも,まったく免疫機序の介入を必要としないことが示された。これまでサルコイドーシスや,クローン病など原因不明の類上皮細胞肉芽腫とされてきたものも,細菌の関与によっておこった肉芽腫の可能性がある。

 なお肉芽腫には,異物に対する反応として,異物肉芽腫があるが,これは上記の類上皮細胞とは異なり,肉芽組織の中に,組織球が多量に滲出したもので,しばしば異物を貪食した多数の異物型巨細胞が出現するのを特徴としている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肉芽腫」の意味・わかりやすい解説

肉芽腫
にくがしゅ

肉眼的に結節状にみえる炎症性病変をいい、医学では習慣的に「にくげしゅ」とよぶことが多い。病理学的にいうと、炎症は循環障害、ことに滲出(しんしゅつ)を主体とする滲出性炎症と、局所の細胞、ことに網内系(細網内皮系)細胞の増殖を特徴とする肉芽腫性炎症とに分類される。網内系細胞とは、細網線維と網状構造をつくるのを特徴とする細網細胞と、それが遊離して旺盛(おうせい)な貪食(どんしょく)機能を有するようになる組織球と、肝のクッペルKupffer細胞や骨髄の毛細血管内皮などのような細網内皮とからなるものである。網内系細胞は、結核の肉芽腫に特徴的にみられるラングハンスLanghans型巨細胞のように、巨大な細胞質と多数の核を有する巨細胞に変形して認められることがよく知られている。結核症、梅毒、ハンセン病などが肉芽腫を形成する炎症(肉芽腫性炎症)の代表であるが、これらは、それぞれ特別な病因に対して、それぞれ特殊な形態を示す肉芽腫を生ずるので、別に、特殊性炎症とよぶ習慣もある。さらに種々の異物に対する処理機転として生ずる肉芽組織が、巨細胞を含んだ結節性病変として認められることがあるが、これは異物肉芽腫とよばれる。

[渡辺 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肉芽腫」の意味・わかりやすい解説

肉芽腫
にくげしゅ
granuloma

肉芽組織から成る腫瘍という意味の用語であるが,実際には腫瘍ではなく,毛細血管と線維芽細胞から成る組織であって,本来は組織欠損を補うためのものと考えられる。結核の際に認められる結核結節,梅毒のゴム腫,リウマチ熱のアショフ結節などは,特異的な肉芽腫の一例である。なお,結核結節の場合,主体をなす類上皮細胞および多核のラングハンス巨細胞はマクロファージに由来し,肉芽腫の中心部に凝固壊死がみられることが特徴で,リンパ球や好中球の浸潤も認められる。

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世界大百科事典(旧版)内の肉芽腫の言及

【肉芽腫】より

…腫瘍の本態が明確でなかったころに名づけられたので〈腫〉という語尾をもつ。病巣中心に組織球からなる結節があり,周囲を,一般の器質化組織である肉芽組織がとりかこむ組織構築をしており,定義上,肉芽腫とは中心部の組織球結節のみを指すとするものと,その周辺の肉芽組織をも含めるとするものと2者があるが,病変を特徴づけるのは,組織球からなる結節であり,時期によっては周りの肉芽組織を欠くこともあるので,病変の成立ちを論ずるうえでは,前者の立場が妥当である。この組織球性結節が類上皮細胞とよばれる形態的特徴を示す細胞からなるものは,類上皮細胞肉芽腫とよばれ,最も重要な肉芽腫である。…

※「肉芽腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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