思す(読み)オボス

デジタル大辞泉 「思す」の意味・読み・例文・類語

おぼ・す【思す】

[動サ四]《「おもほす」の音変化》「思う」の尊敬語
お思いになる。お考えになる。
「そもそもいかやうなる心ざしあらむ人にか、あはむと―・す」〈竹取
心を向けて、大切にお思いになる。お目をかける。愛しなさる。
わらはなりしより、朱雀院の、とり分きて―・し使はせ給ひしかば」〈・若菜下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「思す」の意味・読み・例文・類語

おぼ・す【思】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 ( 「おもほす」の変化した語 ) 「おもう(思)」の尊敬語。
  2. ( はたから見た、その人の様子を示す語が上に来て ) そういう顔つきをなさる。
    1. [初出の実例]「なほいとくるしげにおぼしたりつれば、今もいとおぼつかなくなん」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  3. 物事を理解したり、感受したりするために心を働かせなさる。断定推量意志回想など種々の心の働きをいう。お思いになる。お考えになる。お感じになる。
    1. [初出の実例]「何事思ひ給ふぞ。おぼすらん事何事ぞ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  4. ある対象に心をお向けになる。愛しなさる。大事になさる。
    1. [初出の実例]「むかし、おほやけおぼしてつかう給ふ女の、色ゆるされたるありけり」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
  5. 多く、知覚的動作を表わす動詞の上に付けて、その動作主への尊敬の意を加える。「おぼしいらる」「おぼしうたがう」「おぼししる」「おぼしみだる」「おぼしわぶ」など。

思すの語誌

「おもふ(思)」に尊敬の助動詞「す」が付き、「おもはす」→「おもほす」→「おぼほす」→「おぼす」と転じて中古に成立。平安中期の女流文学盛行に伴って、使用頻度が高くなる。敬意度合は、「思し召す」よりも低く、「思ひ給ふ」よりは高い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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