朱雀院(読み)スザクイン

デジタル大辞泉 「朱雀院」の意味・読み・例文・類語

すざく‐いん〔‐ヰン〕【朱雀院】

嵯峨天皇以後、代々天皇譲位後の住居とされた離宮三条の南、朱雀大路の西にあって、8町を占めた。
朱雀天皇のこと。

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精選版 日本国語大辞典 「朱雀院」の意味・読み・例文・類語

すざく‐いん‥ヰン【朱雀院】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 平安時代、平安京の右京、三条と四条の間にあって朱雀大路に面した邸宅。東西二町、南北四町の広大な敷地を持つ。嵯峨天皇が創建した後院で、宇多天皇以後は、天皇退位後の御所として本格的に用いられ、詩宴等が催された。天暦四年(九五〇)に焼失し、村上天皇が再興したが、皇族臣下の避難、饗宴・納涼・方違等のために一時的に利用される場所となり、次第に荒廃していった。鎌倉時代初期には築地が再建され、内部は遊猟地とされた。
      1. [初出の実例]「秋水見於何処、朱雀院之新家也」(出典:菅家文草(900頃)六・九日後朝、侍朱雀院、同賦閑居楽秋水)
      2. 「十一日に、御くにゆづり給て、みかどはすざくゐんにいで給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
    2. [ 二 ] 朱雀天皇のこと。
      1. [初出の実例]「次帝、村上天皇と申。〈略〉御母、朱雀院のおなじ御はらにおはします」(出典:大鏡(12C前)一)
    3. [ 三 ] 「宇津保物語」の登場人物。嵯峨院の皇子で、嵯峨院のあとを受けて即位。「国譲」の巻で譲位し、朱雀院となる。
    4. [ 四 ]源氏物語」の登場人物。桐壺帝の第一皇子で、母は弘徽殿女御。光源氏の異母兄にあたる。即位後、故桐壺院から源氏の処置について怒りをうけ、眼を病み、冷泉院に譲位。健康がすぐれず出家を思い、女三の宮を源氏に託する。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 退位後、[ 一 ][ 一 ]を隠居所とした天皇の呼び名。

朱雀院の語誌

[ 一 ][ 一 ]について、「累代後院」〔拾芥抄〕ともいわれるが、実際に後院として利用した天皇は限られる。宇多天皇は譲位後に夫妻で住み、詩宴や歌合などの俗世を離れた風流韻事をたびたび行ない、法皇となってからも賀宴に用いた。朱雀天皇も譲位直後に移って寝殿を御所とし、柏梁殿を生母太皇太后藤原穏子の御所とした。これらの史実から、朱雀院の名は「仙洞御所」「太后御所」として知られ、また、延喜・天暦の聖代を想起させ、これらの要素によって虚構の物語に取り込まれたと考えられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「朱雀院」の意味・わかりやすい解説

朱雀院 (すざくいん)

平安初期の後院の一つ。平安京内では邸宅の少ない右京の四条以北で,朱雀大路に沿って西に位置し,8町という広大な面積を占めていた。創始は嵯峨天皇が譲位後の御所として造営したものと考えられる。文献上の初見は836年(承和3)で,仁明天皇が京内の空閑地200余町を生母,橘嘉智子の朱雀院に寄せている。嵯峨天皇のあと皇后の彼女が居住したことを物語るものである。896年(寛平8),譲位を控えた宇多天皇が新造し,退位後に後院として利用した。《貞信公記》にみえる栢梁殿はこのときの出現であろう。上皇はここへ文人たちを召して詩宴を催している。また朱雀上皇の後院にもなった。累代の後院といわれたゆえんである。この邸の苑池は,二つの中島や東南部の池と馬場との間に島町が造られるなど他の寝殿造のそれとは様相を異にしていた。なお島町には雑舎が設けられていたが,これは池の景色を眺めるための釣殿的性格をもつものであったろう。鎌倉時代には遊猟地とする意向があり,すでに荒廃していたことを物語っている。
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世界大百科事典(旧版)内の朱雀院の言及

【後院】より

…冷然院は文徳朝にも後院に充てられ,854年(斉衡1)にはこれに移り,内裏に帰ることなく同院で没した。また朱雀(すざく)院は嵯峨太皇太后の後院に充てられた後,天皇の後院となり,《西宮記》には冷泉(れいぜい)院(もと冷然院),朱雀院を〈累代の後院〉と称している。平安中期以降も,960年(天徳4)村上天皇が内裏焼亡のため冷泉院に移ったのをはじめ,同院はしばしば皇居に充てられ,〈天皇暫らく本宮を避けて他に遷御せんと欲する〉とき,その御在所に充てられるという(《新儀式》),後院本来の機能を保ったが,一方では譲位の盛行に伴い,しだいに譲位後の御所に充てられる例が多くなった。…

※「朱雀院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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