思わく(読み)おもわく

精選版 日本国語大辞典 「思わく」の意味・読み・例文・類語

おもわ‐く おもは‥【思く・思惑ワク

[1] (動詞「おもう(思)」のク語法)
① (名詞的に用いて) 思うこと。
万葉(8C後)一二・三一八九「あしひきの山は百重に隠すとも妹は忘れじ直(ただ)に会ふまでに 一に云、隠せども君を思苦(おもはク)止む時もなし」
② (副詞的に用いて) 思うことには。
※万葉(8C後)九・一七四〇「そこに念久(おもはク) 家ゆ出でて 三歳(みとせ)の間に 垣も無く 家うせめやと」
[2] 〘名〙 (思惑) ((一)から転じたもの。「惑」は当て字)
① 心の中で考えている事柄。思うところ。
(イ) (━する) こうだ、こうしようなどと考えている点。また、そう考えること。意図
※狭衣物語(1069‐77頃か)四「打たれじと用意したるゐずまひ・をもはくどもも、おのおのをかしう見るを」
洒落本・蕩子筌枉解(1770)絶句「この女郎の一客をおもわくはめて身うけさせ」
(ロ) こうなるだろうという予想見込み。また、こうだろうという推測
※浮世草子・本朝二十不孝(1686)二「外よりの思はくには、五万両も有べきやうに見ゆべし」
(ハ) ある人に対して、他の人が持っている考えや感じ。評判。気うけ。
日葡辞書(1603‐04)「ヒトノ vomouacuga(ヲモワクガ) ハヅカシイ」
② ある人を恋い慕うこと。思いをかけること。
評判記・役者評判蚰蜒(1674)序「今村のむらなきかいなにおもわくなんどをほり付」
③ 自分が思いをかけている相手情人愛人
仮名草子・都風俗鑑(1681)一「物ずきにまかせて以為(オモハク)をこしらへ」
④ (①(ロ) の意味から) 特に、相場変動を予想すること。また、その予想によって売買すること。
中外商業新報‐明治三七年(1904)一月一日地場と称する商館番頭仲買の思惑百九十八番の鞘取売等にて、喰合は益々増加し」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「思わく」の意味・読み・例文・類語

おもわ‐く〔おもは‐〕【思わく/思惑】

原義。「惑」は当て字》
あらかじめ考えていた事柄。考え。意図。また、見込み。「なにか―がありそうだ」「―が外れる」
自分のしたことに対する他人反応、評価。評判。「世間の―が気になる」
相場の変動を予想すること。また、その予想によって売買すること。
人に思いをかけること。恋心。
「何の―がありて、美形の女の方より、指爪を放しやるべし」〈浮・禁短気・二〉
思いをかけた人。恋人。情人。
「この―の心算用をすまさせいでは」〈浮・禁短気・一〉
《動詞「おもう」のク語法》
思うこと。
「あしひきの山は百重ももへに隠せども君を―止む時もなし」〈・三一八九〉
(副詞的に用いて)思うことには。思うには。
「里見れど里も見かねて怪しみとそこに―」〈・一七四〇〉
[類語]意図積もり心組み心積もり考え

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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