傾城禁短気(読み)ケイセイキンタンキ

デジタル大辞泉 「傾城禁短気」の意味・読み・例文・類語

けいせいきんたんき【傾城禁短気】

浮世草子。6巻。江島其磧えじまきせき作。正徳元年(1711)八文字屋刊。1巻4話からなる色道論。

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精選版 日本国語大辞典 「傾城禁短気」の意味・読み・例文・類語

けいせいきんたんき【傾城禁短気】

  1. 浮世草子。六巻六冊。江島其磧作。宝永八年(一七一一)刊。題名は「禁断義」「禁談義」(日蓮宗対浄土宗等よりの宗論)のもじり。談義説法の形をもじりつつ、巻一、二では女色、男色の優劣を論じ、巻三では公娼私娼争論を描き、巻四、五、六では吉原新町島原背景として色道の聖(ひじり)がその奥儀を伝えるという構成。一巻四話、全二四話から成る。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「傾城禁短気」の意味・わかりやすい解説

傾城禁短気
けいせいきんたんき

江島其磧(きせき)の浮世草子。1711年(宝永8)八文字屋八左衛門刊。6巻24話。題簽角書(だいせんつのがき)に「色道大全」とある。「禁短気」は「禁談義」のもじりで、談義、説法、宗論の形を借りて、女道と衆道(しゅどう)、公娼(こうしょう)と私娼の優劣、遊女と遊客の駆け引き・心得などを説く。先例に『好色床談義』(1689)等あり、直接には西沢一風(いっぷう)の『風流三国志』(1708)の巻3ノ4「野傾宗旨談義」「野傾禁談義」に想を得るが、それを売色の諸相に拡大。「色道大全」というにふさわしく、また其磧好色物中の集大成ともいいうる。

[江本 裕]

『『評釈江戸文学叢書2 浮世草子名作集』復刻版(1970・講談社)』『野間光辰校注『日本古典文学大系91 浮世草子集』(1966・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「傾城禁短気」の意味・わかりやすい解説

傾城禁短気 (けいせいきんたんき)

浮世草子。江島其磧(きせき)作。1711年(宝永8)刊。6巻。1~2巻は宗論に擬した男色・女色優劣論で後者の勝利に終わる。3巻は説法に擬して私娼・密売色者の諸相を,4~6巻は説法・談義に擬して江戸の吉原,大坂の新町,京の島原における遊びの諸相,手管(てくだ駆引きを述べる。従前の好色物の対象となった諸色道を集成し,趣向本位,技巧重視の宝永期浮世草子の頂点に位置する。其磧の代表作。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「傾城禁短気」の意味・わかりやすい解説

傾城禁短気
けいせいきんたんき

浮世草子江島其磧作。6巻6冊。正徳1 (1711) 年刊。角書「色道大全」。八文字屋本。宗論あるいは談義 (通俗説法) に託して色道を説く形をとり,各巻4話ずつの短編から成る。巻一,二は男色女色の優劣の論,巻三は公娼 (島原,新町,吉原) と私娼 (白人,茶屋者,風呂屋者) との争いを述べ,巻四~六はそれぞれ吉原,新町,島原の遊郭における遊女の手管,色道の秘密伝授という構成。作者は八文字屋自笑と印刷されているが,実際は其磧の作で,これがもとで其磧は一時八文字屋と別れ,独立する。

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世界大百科事典(旧版)内の傾城禁短気の言及

【浮世草子】より

…1700年刊の西沢一風の《風流御前義経記(ごぜんぎけいき)》,翌年の江島其磧(きせき)の《けいせい色三味線》より浮世草子は新方向をとる。演劇色・古典色の導入,世相への敏感な反応,趣向重視,整合性志向,長編化の傾向がそれで,頂点に立つ作は其磧の《傾城禁短気》(1711)であり,その間の都の錦,北条団水,青木鷺水(ろすい),月尋堂錦文流の雑話物,武家物や実際の事件を脚色した長編作にも同じ風潮の反映がある。其磧は次いで《世間子息気質(むすこかたぎ)》(1715)などの気質物に新味を出し,1710年代以後人気歌舞伎・浄瑠璃翻案の長編の時代物を作る。…

※「傾城禁短気」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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