フランスの劇作家マリボーの三幕散文喜劇。1730年初演。父親たちが決めた結婚をする前に、相手をよく知ろうとして、シルビアは小間使いリゼットと服装や身分を取り替える。婚約者のドラントも、同じ目的で、下男のアルルカンになりすまして、シルビアの前に現れる。2人の若者は出会ったときから、相手に愛情を抱くが、相手を身分の下の人間であると心のなかでは考えており、そこから葛藤(かっとう)が生まれる。結局、ドラントはシルビアに身分を明らかにするが、娘は兄マリオの助けを借り、小間使いとしての自分との結婚をドラントに同意させる。また、同時にリゼットとアルルカンの恋も同時に進行する。作品は、若者たちの心の葛藤、恋心の細かな動きを、台詞(せりふ)のやりとりのうちに精妙に表現するとともに、結婚は身分によるのではなく、相手の人格によると主張している。マリボー演劇の最高傑作の一つである。
[原 好男]
『進藤誠一訳『愛と偶然との戯れ』(岩波文庫)』
敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...