日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリボー」の意味・わかりやすい解説
マリボー
まりぼー
Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux
(1688―1763)
フランスの劇作家、小説家。パリに生まれる。少年時代をオーベルニュ地方で過ごし、1712年パリに戻り、サロンに出入りし、芝居および小説を書いているが、評判をとるには至らない。20年喜劇『恋に磨かれたアルルカン』で成功を収める。同年財務総監ローの経済政策に巻き込まれ破産。以後、文筆だけで生計をたてようとする。1人でなんども新聞の発行を試みるが、長続きしない。描写の写実性と鋭い心理分析で知られる未完の小説『マリアンヌの生涯』(1731~41)、『成り上がり百姓』(1734~35)の2作を除けば、多くは劇作品で、40編にも及ぶ。『恋の不意討ち』(1722)、『愛と偶然との戯れ』(1730)、『偽りの告白』(1737)、『試練』(1749)など恋愛心理劇として有名である。恋の発生とそれをめぐる主人公の心理が、軽やかであるが心のひだを巧みに表現する台詞(せりふ)によって表されているところに特徴があり、その台詞はマリボーダージュmarivaudageとよばれている。すべての作品が恋愛心理劇であるわけではなく、人間の平等を寓意(ぐうい)的に主張する『奴隷の島』(1725)、『理性の島』(1727)のような作品もある。
[原 好男]
『小場瀬卓三他訳『マリヴォー・ボーマルシェ名作集』(1977・白水社)』