日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦時緊急措置法」の意味・わかりやすい解説
戦時緊急措置法
せんじきんきゅうそちほう
太平洋戦争敗戦直前の1945年(昭和20)6月22日公布、翌日施行の、本土決戦に備え、壊滅に瀕(ひん)した経済と秩序を立て直すことを目的に制定された法律。軍需生産・運輸通信の維持増強、生活必需物資の確保、防衛と秩序維持、税制の適正化、戦災の善後措置、そのほか広範な事項に関する緊急措置を現行法にかかわることなく施行しうることにしたもの。軍需生産増強、工員懲戒、居所制限、耕作命令、土地収用など、その効力の及ぶ範囲は広く、ほとんど立憲的手続を白紙にした非常大権の行使に等しいものであった。戦況は敗北寸前にあり、政治経済秩序はなかば麻痺(まひ)し、行政がそのつどの切迫した軍事的必要に応じて恣意(しい)的に行われるようになったわけである。
[長 幸男]