房中術(読み)ぼうちゅうじゅつ

改訂新版 世界大百科事典 「房中術」の意味・わかりやすい解説

房中術 (ぼうちゅうじゅつ)

男女の交合によって不老長生を得ようとする養生術。本来,男女の気を交えることで体内の陰陽の気の調和を図り,あわせて精気消耗を防いで健康を保持し長寿を得ようとする古代保健医学の一分野で,主として性交の際の禁忌や技法を説く。その起源は古く,前漢の《漢書》芸文志には,すでに房中八家の書が記載されており,また,近年湖南省長沙の馬王堆漢墓から出土した帛書はくしよ)《養生方》には後世の房中術書の原型的記事が見られる。その後,神仙術中に取り込まれてしだいに複雑かつ神秘化されたが,その要訣終始,体内の精気を外に泄(もら)さず脳に還流させる〈還精補脳〉にあるとされた。一方,具体的性技を説くところから,後世淫猥(いんわい)に堕するものも現れた。なお,日本の丹波康頼の《医心方》房内篇は,《素女経》《玄女経》《玉房秘訣》などの房中術書の逸文を多く載せることで著名である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「房中術」の意味・わかりやすい解説

房中術
ぼうちゅうじゅつ
fang-zhong-shu

閨房の中での男女交合の実践法で,生命延長を求める養生術。『漢書』「芸文志」の方技略に房中術のことを記し,医術の一種とある。のちに道教に取入れられ,辟穀・服餌調息・導引と並んで,重要な不老長生の術となった。この長生法は,体内の陰陽二気を調和させて体力の消耗を防ぐ術である。房中術は本来はまじめなものであるが,性交の技術のため淫猥に思われやすく,仏教側や一般の士人からの攻撃の的となった。

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