中国で帛(絹布)に書かれた書をいう。紙が発明される以前の書写材料としては古くは竹や木の札(簡牘(かんとく))が多く用いられてきたが,帛もその一つであった。現存する帛書の古いものとしては,1934年に湖南省長沙市東郊の戦国墓で発見された楚の帛書がある。彩色の絵入りで,宇宙秩序の神話的起源や人間の社会行動の吉凶を記した神秘的なものであるが,1973年には同じ長沙の馬王堆(まおうたい)漢墓の3号墓から帛に書かれた書籍が大量に発見された。墓葬の年代は前168年で,書籍は《老子》《周易》をはじめ,《戦国策》や《春秋左氏伝》に関係のある史書,天文星占書,相馬書,医書など全部で12万字にのぼる。0.7~0.8cm間隔の罫は簡牘の幅に相当し,帛書は罫をひくことによって簡牘を並べたかっこうになり,書籍でいえば上製本にあたる。なお同墓からは帛の素材を活かした3種の地図が発見されている。実見しうる中国最古の地図であるが,後世のものと比べて精度や内容のいずれの点でも遜色がなく,地図作製技術の水準の高さを示している。
執筆者:永田 英正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
…現在,漢代の竹簡,木簡が中国本土はもとより新疆ウイグル自治区などの辺境で多数発見されているが,漢代になると白絹を書写の材料とすることが盛行した。白絹に文字や絵を書いたものを〈帛書〉〈帛画〉と呼んでいる。竹簡,木簡類は1片に狭いものでは1行,広いものでも数行しか書けず,1冊の書物を写すことになると多数の簡を皮紐でしばったが,重くて携帯に不便であり,披閲も容易でなかった。…
※「帛書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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