所狭し(読み)トコロセシ

デジタル大辞泉 「所狭し」の意味・読み・例文・類語

ところ‐せ・し【所狭し】

[形ク]
場所が狭い。いっぱいで余地がない。
「小さき屋ども作り集めて奉り給へるを、―・きまで遊び広げ給へり」〈紅葉賀
堂々としている。
「さるおほのかなるものは、―・くやあらむ」〈・九七〉
気づまりである。窮屈である。
「かくよろづに―・き身を」〈狭衣・一〉
取り扱いにくい。やっかいである。
さうの琴は中の細緒の堪へがたきこそ―・けれ」〈・紅葉賀〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「所狭し」の意味・読み・例文・類語

ところ‐せ・し【所狭】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 大きかったり、勢いが盛んであったりして、それをとりまく状況が狭く感じられるさまをいう。
  2. 場所が狭すぎておさまり切らないほどいっぱいであるさまをいう。余地がない。
    1. [初出の実例]「せばき縁に所せきひの御さうぞくの下襲ひきちらされたり」(出典:枕草子(10C終)一〇四)
    2. 「路次の警固、見物の群集、処(トコロ)せきまでに立続く」(出典読本椿説弓張月(1807‐11)続)
  3. あたりが狭く感ずるほど、盛んであるさま、堂々としているさま、はなはだしいさまをいう。
    1. [初出の実例]「さるおほのかなるものは、所せくやあらんと思ひしに」(出典:枕草子(10C終)九七)
    2. 「所せきさましたる人こそ、うたて、思ふところなく見ゆれ」(出典:徒然草(1331頃)二)
  4. 事が過大・過重であるため難儀であるさま、困惑するさま、もてあつかいかねるさまをいう。厄介である。
    1. [初出の実例]「この生絹(すずし)だにいと所せく暑かはしく」(出典:枕草子(10C終)一九八)
    2. 「この若君は〈略〉あらあらしきをとこの中にあつかひ聞ゆるに、物むつかしうところせき事もなし」(出典:浜松中納言物語(11C中)二)
  5. 周囲の状況に拘束されて、事が心のままに運ばないさまをいう。気づまりである。窮屈である。
    1. [初出の実例]「かかる人さへいできにしかば、いとどところせく」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    2. 「かくよろづに所せき身を、いかにも具し給てこそは、いづくへも」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)

所狭しの派生語

ところせ‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙

所狭しの派生語

ところせ‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

所狭しの派生語

ところせ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android