改訂新版 世界大百科事典 「把頭制」の意味・わかりやすい解説
把頭制 (はとうせい)
bǎ tóu zhì
旧中国の鉱山業,運輸業,紡績業などに多くみられた労働請負制度。包工制,包身制ともいう。すでに明・清の社会に存在していた。把頭(親方)は,経営者から請け負った作業に従事させる労働者,あるいは経営者が必要とする数の労働者を,同郷関係などのルートで集めてきて,衣食住まで管理しながら労働させ,一括して賃金をうけとった。労働者は経営者とは間接的な賃金雇用関係にあるが,把頭に対しては一時的な債務奴隷の立場にあり,賃金の中間搾取はもとより,前渡し金というかたちの高利貸,その他経済外強制にも苦しめられた。封建遺制の色彩が強い雇用関係であったが,資本主義的生産関係にたつ近代的な工場,鉱山(とくに外国資本による)でも,半農半工的性格の未熟練労働者を集団的な肉体労働に従事させるために長く残存していたばかりでなく,日本帝国主義は日中戦争中,生産力増強のため把頭制を積極的に活用すらした。解放後1950年3月政務院は把頭制廃止の法令を定めた。
執筆者:森 時彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報