クーリー(読み)くーりー(英語表記)Charles Horton Cooley

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クーリー」の意味・わかりやすい解説

クーリー
くーりー
Charles Horton Cooley
(1864―1929)

アメリカの社会学者。初期アメリカ社会学の心理学的社会学派を代表する一人。1894年ミシガン大学を卒業。助教授準教授を経て同大学教授となる。1918年アメリカ社会学会会長に就任。その主著『人間性と社会秩序』(1902)、『社会組織』(1909)において、「共感的内省」の方法により、個人主義的社会観と集団主義的社会観を調整する「社会的自我」social selfの概念を主張、これを「鏡に映った自我」looking-glass selfと説明した。また、その形成の苗床である「第一次集団」primary groupの機能の重要性を強調したことで有名である。第一次集団とは、家族、近隣遊戯集団に典型的な対面的かつ親密な接触の場であり、そこで個人は発達の初期に社会的統合を経験し、社会的理想を内面化し、社会的自我が形成される。その後、『社会過程』(1918)において社会変動論にも関心を示し、社会過程における個人の知的側面の変化、とくに金銭的価値の進展に伴う価値の葛藤(かっとう)を重視した。

[大塩俊介 2018年7月20日]

『大橋幸・菊池美代志訳『社会組織論』(1970・青木書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クーリー」の意味・わかりやすい解説

クーリー
Cooley, Charles Horton

[生]1864.8.17. ミシガンアナーバー
[没]1929.5.8. ミシガン,アナーバー
アメリカの社会学者。ミシガン大学に学び,1894年同大学で博士号を取得。以後没するまで母校で研究に従事。 1918年にアメリカ社会学会会長に就任。 F.H.ギディングズや A.シェッフレの社会学,J.M.ボールドウィンや W.ジェームズの心理学の影響を受け,社会や制度と個人との相互作用を研究。「第1次集団」「鏡に映る自己」など,のちの社会学に残る有名な概念を提供している。主著『人間性と社会秩序』 Human Nature and the Social Order (1902) ,『社会組織』 Social Organization (09) ,『社会過程』 Social Process (18) 。

クーリー(苦力)
クーリー
ku-li; k`u-li; coolie

中国やインドなどの下層労働者を呼んだ語。もっぱら「下賤」な労働に従事するインドの低カーストの名が語源ともいわれるが,革命前の中国では運輸交通の労働に従事する者が多かった。 19世紀のイギリス領における奴隷制廃止後は,黒人奴隷に代って中国人,インド人がアメリカ大陸,西インド諸島,東南アジアの農園,鉱山などで使役されるようになったが,彼らもクーリーと呼ばれた。形式的には契約労働が多いが,労働条件はきわめて悲惨で,実態は人身売買による奴隷的労働に等しかった。

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