本来,労働者と使用者の間で直接交わされるべき雇用契約に介入して,どちらかから謝礼を受け取ったり,賃金の一部を先取りすること。俗に〈ぴんはね〉と呼ばれる。中間搾取には大きく分けて,中間請負人(請負業者)が特定の作業を請け負い,その請負代金の一部を取得する形態と,労働者を直接供給し労働者からその賃金の一部を取得する形態とがある。第2次大戦前の日本では製造業を中心として社会的に適法な行為として広範に存在していたが,戦後,職業安定法44条が労働者供給事業を禁止し,労働基準法6条が〈他人の就業に介入して利益を得てはならない〉ことを規定するにともなって,合法的には存在しなくなった。だが造船業,鉄鋼業などに代表的な社外工制度など新たな形態での中間搾取は広く残存していた。また最近,対事業所サービスの分野で装いを新たにした請負業,人材派遣業が急速に拡大し,現行法とのずれが問題となってきている。
執筆者:亀山 直幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
製品加工・組立てや労働力供給の中間に介在し、取引機会の供給と管理・監督などを理由に、主として下請業者や労働者の賃料のぴんはねを行うことをいう。中間搾取も搾取の一形態ではあるが、その内容は搾取より狭く、内職・家内労働や土建業・鉱業などでの請負労働など、いわゆる縁辺労働に支配的に認められる。他方、高度産業経済下での企業内分業や社会的分業の発達が、社外工制や下請加工制を不可避なものとしたり、パート労働を増加させている面もある。今日では、あまりにも前近代的な中間搾取行為は、職業安定法や労働基準法、さらには不当・不正な取引を禁じている独占禁止法などによって、法制的に規制されており、その是正策がとられている。
[吉家清次]
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