押し絵(読み)おしえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「押し絵」の意味・わかりやすい解説

押し絵
おしえ

布細工による貼(は)り絵の一種。下絵を描いた厚紙(主に板目紙を用いる)を細かい部分に分けて切り抜き、それぞれの部位に適した色質の布片でくるみ(ときに綿を入れて膨らみをもたせる)、それらをもとの図柄にあわせて再編成する。布や綿の質感により、薄肉のレリーフのような立体感が生まれる。用布はおもに縮緬(ちりめん)、金襴(きんらん)、緞子(どんす)、紗(しゃ)、羽二重(はぶたえ)など、部位によってすが糸(撚(よ)りをかけていない生糸)を用いる。顔や手足にあたる部分は、胡粉(ごふん)を塗ってから彩色したり目鼻を描き加えたりする。芯(しん)にする板目紙は、生漉(きず)きの和紙を貼り合わせたもので、押し絵には、12枚合わせの「タコ」がもっとも多く用いられる。布と紙を接着するための糊(のり)としては、飯粒を練ったものが最良であるが、化学糊も防虫性が高い。布で包み終わった各片は、裏からまち紙で止め合わせ、最後に全体を台に貼り付ける。もっとも古い押し絵は正倉院宝物の「人勝(じんしょう)」だが、綿入れをしていない平面的なものである。これが江戸時代になって大流行し、手箱や額、羽子板などに仕立てられた。明治時代には婦女子手芸のたしなみとして筆頭にあげられていた。現在では羽子板だけでなく、種々の室内装飾品やカードに幅広く応用されている。

[秋山光男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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