綿入れ(読み)ワタイレ

デジタル大辞泉 「綿入れ」の意味・読み・例文・類語

わた‐いれ【綿入れ】

布団などに綿を入れること。
防寒用に、表布と裏布との間に綿を入れて仕立てた衣服ちゃんちゃんこ羽織・ねんねこ・どてらなど。わたぎぬ。 冬》
[類語]丹前どてら

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「綿入れ」の意味・わかりやすい解説

綿入れ
わたいれ

表布と裏布との間に綿を入れた衣服で、防寒用に用いられる。綿入れ長着、綿入れ羽織、綿入れ袖(そで)なし羽織(羽織下)、半纏(はんてん)、丹前などがあるが、一般に綿入れといえば綿入れ長着をさす。古くは綿布の長着に綿を入れたものを布子(ぬのこ)、絹布の長着に綿を入れたものを小袖といった。明治末期まで、冬の12月から翌年2月ごろまで綿入れを着用した。現在は下着の多様的な発達と生活条件の変化により、秋冬春を通して袷(あわせ)を着用するようになったため、綿入れ長着、綿入れ羽織は用いられなくなった。しかし幼児用の袖なし羽織(ちゃんちゃんこ)、老人用羽織下に用いる立衿(たちえり)の袖なし羽織、洋服の上にも着用できる半纏(はんてん)(綿入れ)、くつろぎ着としての丹前などは、現在でも防寒用として年齢を問わず愛用されている。

 江戸時代には木綿綿は一般に普及しておらず貴重品であった。当時の小袖に用いられた綿は真綿である。江戸末期ごろから明治にかけて、民間で木綿綿(小袖綿=青梅(おうめ)綿)を用い、綿入れ長着を着用するようになった。当時の綿入れ長着の裾ぶき寸法は1センチメートル前後であった。大正末期ごろから綿入れの名をとどめるように袖口に含み綿を入れ、裾には裾芯(すそしん)として綿を入れる口綿入れが現れた。この口綿入れの応用として、現在も表地の厚さに対して裏地薄手の場合、表地、裏地の厚さのバランスを整えるために、袖口に真綿を薄く伸ばして入れることがある。詰め物としての綿は、木綿綿が普及してから、真綿のかわりに木綿綿を用いるようになった。長着、羽織には青梅綿、半纏、丹前には中入れ綿(丹前綿=どてら綿)または青梅綿を入れる。綿入れのとき、補強のために敷き真綿を用いる。また、真綿が布目を通して外面に出、摩擦によって毛玉ができることを防ぐためには吹止め綿を用いる。第二次世界大戦後、化繊綿(合繊綿)が開発されて数多く市場に出回った。これは軽く保温性に優れているが、吸湿性に乏しく、熱に弱い欠点があり、総合してみれば天然の綿のほうが勝っている。ことに老人、幼児には天然のものを用いるほうがよい。綿入れが汚れた場合、押し洗いをし、次の寒さの季節に備える。

 なお第二次世界大戦中、民間人は防空頭巾(ずきん)や肩当てに木綿綿を厚く入れて身を守った。これと同じような綿入れ頭巾が、近年地震による災害に対応して、防災用頭巾としてクローズアップされている。

[藤本やす]


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改訂新版 世界大百科事典 「綿入れ」の意味・わかりやすい解説

綿入れ (わたいれ)

袷(あわせ)仕立ての裏と表の間に木棉綿をいれた防寒用和装衣類。麻の苧くずを用いた庶民布子(ぬのこ)が,室町時代以後,木棉の栽培普及によって木棉の綿入れに変わる。軽くて暖かいため第2次大戦中までは着物,羽織,羽織下,胴着,はんてん,ちゃんちゃんこ,丹前があったが,暖房の普及と綿をいれてとじる手間や洗い張りが必要なため現在ではほとんど失われた。かわってクリーニングのできるキルティングの既製品の袖無しや,はんてんが用いられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「綿入れ」の意味・わかりやすい解説

綿入れ
わたいれ

裏地をつけ,中に綿を入れた防寒用の衣類。古くから着用されていたが,奈良・平安時代の綿入れは絹綿が使われた。木綿が輸入されてから綿布と木綿綿が普及し,江戸時代末期には布子と称し,庶民に広く着用された。明治以後,製綿,紡績,紡織の機械化に伴い綿入れの衣服はさらに一般化した。しかし洋装化が進み,防寒保温の手段が多様化するにつれて,綿入れの需要は漸減している。

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世界大百科事典(旧版)内の綿入れの言及

【布子】より

…いわゆる綿入れのこと。昔,庶民が胴着にして着物の下に着たり,あるいは上着に用いた粗末な防寒衣ないしは保温衣で,とくに綿の厚く入ったものをいう。…

※「綿入れ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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