日本大百科全書(ニッポニカ) 「掛踊」の意味・わかりやすい解説
掛踊
かけおどり
集落から集落へ踊りを掛け継いでいく方式の踊り。風流踊(ふりゅうおどり)や盆踊りに多くみられる。厄神(やくがみ)や盆の精霊、虫送りのときの悪霊など、長居無用の諸霊を村から村へと送り継いで最後に海へ送り出してしまおうとするもの。掛踊には諸霊のよりつく依代(よりしろ)が必要で、それは風流傘であったり、背中に負う竹刀(しない)や簓(ささら)であったりするが、諸霊をここに誘い込んで踊りの渦に巻き込み、やがて村境に送る。送り込まれた村はまた次の村へと群舞して送り継ぐ。近世初期の伊勢(いせ)踊が伊勢から踊り継がれて全国に広がった例があるが、今日では掛踊の名称だけが各地に残っている。古風を伝えるところは長野県下伊那(しもいな)郡天竜村坂部(さかんべ)の盆踊りなどで、ここでは群行して踊り込むことをカケルという。盆の期間、日をずらして土地の精霊、無縁仏、新仏などに次々に踊りをかけ、盆の17日未明に送り盆といって鉦(かね)、太鼓を打ちながら藪(やぶ)の中に諸霊を送り込む。
[萩原秀三郎]