顧客による有価証券の売買で発生した顧客の損失について、証券会社が補い埋めること。金融商品取引法では第39条で金融商品取引業者と顧客の双方について、禁止行為として明記されている。事前に証券会社等が損失保証を行うのは、投資者の自己責任原則に反し、証券市場の公正な価格形成機能を阻害することになるし、事後的に損失補填を行うことは、証券会社の市場仲介者としての中立性、公平性、健全性に背く行為だからである。顧客サイドに対しても禁止行為として明記されているのは、大口取引の条件として証券会社に損失補填を要求するような行為を抑止するためである。
1991年(平成3)6月に表面化した証券不祥事では、証券会社が大口顧客に対して総額約2164億円の損失補填を行っていたことが明らかになり、社会問題化した。当時の証券取引法においては、事前の損失保証の約束を伴う投資勧誘を禁止していたものの、事後の損失補填については明文規定されていなかった。このため、1991年の損失補填問題発生後に法改正が行われ、損失補填禁止が明文化された経緯があり、今日の金融商品取引法に継承されている。
[高橋 元]
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