国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため,有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ,かつ,有価証券の流通を円滑ならしめることを目的として(証券取引法1条),1948年に公布された,証券取引を規制する基本法(1947年に公布された同名の法律が,一部が施行されただけで48年に全面改正されたもの)。当時の占領軍司令部の示唆に基づき,アメリカの1933年証券法および1934年証券取引所法を模範として制定され,それによって従前から存在した有価証券業取締法,有価証券引受業法及び有価証券販売業法は廃止された。
証券取引法は,有価証券の投資判断に必要な情報の提供を目的とする企業内容の開示を要請し,証券取引に関係する証券会社および証券取引所等の機関の監督・規制を定め,かつ,証券取引を規制することを内容とする。
企業内容の開示(ディスクロージャー)として,証券取引法は,有価証券の募集または売出しに際して有価証券届出書の公衆縦覧および有価証券を取得しようとする者に対する目論見書の交付を要請し,企業内容の継続的な開示のために有価証券が証券取引所に上場され,証券業協会に登録され,募集もしくは売出し(募集・売出し)のために大蔵大臣に届出をした会社または一定の外形基準に該当する会社に対して,有価証券報告書,半期報告書および臨時報告書を提出して,それが公衆の縦覧に供されるようにすることを要請する。また,この関係で,証券取引法は,有価証券の公開買付けについて規定し,公開買付けの条件が均等であるべきこととともに,公開買付けに当たっては,公開買付届出書の公衆縦覧,公開買付けの公告および説明書の交付による開示を要請する(〈株式公開買付け〉の項参照)とともに,上場会社または店頭登録会社の発行済株式の5%を超える株式を有する者にその株式の保有状況の開示を要請している。
証券取引に関係する機関の規制として,証券取引法は,証券会社,証券取引所および証券金融会社の免許制を定め,証券会社が組織する団体である証券業協会が証券取引を公正ならしめ,かつ,投資者を保護するために自主規制を行うべきものとしている。なお,証券取引法は,証券業協会のみならず,証券会社を会員とする証券取引所が証券会社に対して自主規制をなすべきものとするが,その自主規制自体を大蔵大臣が監督・規制すべきものとしており,その下での証券会社に対する規制は,実際上,大蔵省による直接の規制および大蔵省の監督・規制を受けた証券業協会および証券取引所による自主規制によって行われている。
証券取引の規制として,証券取引法は,相場操縦および有価証券の募集または売出しを容易にするための安定操作を規制し,有価証券の投資判断に影響を及ぼす重要な未公表の情報を利用して証券取引を行うインサイダー取引を規制し,その他の不公正な取引を禁止している。なお,証券会社またはその役員もしくは使用人の不正取引については,証券取引法およびその下での〈証券会社の健全性の準則等に関する省令〉によって,とくに詳細にその禁止が定められている。
証券投資信託の規制に関しては,証券投資信託の制度を確立し,証券投資信託の受益者の保護を図ることにより,一般投資者による証券投資を容易にすることを目的として,証券取引法とは別に,証券投資信託法が1951年公布されている。また証券投資顧問の規制に関しては,証券投資顧問業を営む者について登録制度を実施し,その事業に対し必要な規制を行うことにより,その業務の適正な運営を確保し,もって投資者の保護を図ることを目的として,投資顧問業法が1986年に制定されている。
執筆者:神崎 克郎
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国民経済の適切な運営および投資者の保護に資するため、有価証券の発行および売買その他の取引を公正ならしめ、かつ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的として1948年(昭和23)に制定された法律。2006年(平成18)の改正により、金融商品取引法に改名された。
[編集部]
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…有価証券の売買取引を行うために必要な市場を開設することを目的として証券取引法に基づいて設立された組織または施設をいう(証券取引法2条11項)。証券取引所が有価証券の売買取引のために開設する市場を有価証券市場という(2条12号)。…
※「証券取引法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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