改訂新版 世界大百科事典 「搗栗」の意味・わかりやすい解説
搗栗 (かちぐり)
乾燥させたクリの実を臼でついて殻と渋皮をとったもの。江戸前期の《本朝食鑑》(1697)などは天日で干しあげたものをつくとし,後期の《草木六部耕種法》(1823)などは1昼夜ほど〈あく〉につけてから同じようにしてつくるとしている。〈搗栗子〉の語は奈良時代から見られ,《延喜式》には,丹波その他の諸国から貢納され,神祭仏会などの料として〈平栗子〉〈干栗子〉〈甘栗子〉〈生栗子〉などと併記された例も見られる。これらのうち〈平栗子〉についてのみ,〈生栗子〉1石で1斗2升5合の〈平栗子〉ができるという記述があるが,〈搗栗子〉〈干栗子〉については記載がなく,これらの間にどのような違いがあったのかは明らかでない。かちぐりを〈勝栗〉だとしてめでたい食品とする観念がいつごろ生まれたかも明らかでないが,《本朝通鑑(ほんちようつがん)》(1670)には豊臣秀吉の小田原征伐のさい,駿河の土民がかちぐりを捧げて喜ばれた話を載せ,《和漢三才図会》(1712)が武家はかちぐりを〈勝軍利(かちぐり)〉の意として重んずるとしていることなどから,江戸初期までには形成されていたものと思われる。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報