改訂新版 世界大百科事典 「擬経」の意味・わかりやすい解説
擬経 (ぎけい)
nǐ jīng
中国,経書を摸擬して著作すること。前漢末の揚雄は経のうち最も尊ぶべきは《易経》であると考え,《易経》に摸擬して《太玄経》を作り,伝のうち最も尊ぶべきは《論語》であるとして,《論語》に摸擬して《法言》を作った。また隋の王通は《礼論》25篇,《楽論》20篇,《続書》150篇,《続詩》360篇,《元経》50篇,《賛易》70篇,いわゆる王氏の六経を著した。これらは擬経の最も著明なものである。経書は万古不易の真理を説く聖人の著作であるはずなのに,擬経は〈その実なくしてその事をなす〉として,儒家の正統主義に立って厳しく非難する者もある。しかし擬経は経書への反逆ではない。むしろ経書に絶対的価値を認め,その忠実な祖述者たらんとしている。経学の内にあって,その権威を守り,その教説を明らかにしようとする精神の現れとみるべきで,いわば経学の膨張作用の所産である。
執筆者:日原 利国
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報