精選版 日本国語大辞典「擬」の解説
ぎ‐・する【擬】
〘他サ変〙 ぎ・す 〘他サ変〙
① それでないものをそれに見立てる。なぞらえる。たとえる。
※万葉(8C後)一七・三九六七・題詞「聊擬二談咲一耳」
② まだ決まっていないことをあらかじめ当てはめる。仮に当ててみる。仮定する。
※今昔(1120頃か)九「此は此、勘当して過に擬せる五人と書けり」
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「各(おのおの)存じの旨有らば、子細を奏聞して聖断を仰ぐべき処に、私に諍論(しゃうろん)をいたさむと擬(ギ)し、武士巷に充満する由、天聴を驚かし、叡聞に及ぶ」
③ まねる。似せる。
※太平記(14C後)二四「釈尊の十大弟子に擬して、扈従(こしゃう)の
(よそほひ)厳重なり」

※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一「故に今鉄橋石室を以て西洋に擬するは易しと雖ども」
④ 当てがう。さし当てる。つきつける。押し当てる。
※兵範記‐保元三年(1158)二月二九日「殿下御盃按察使給レ之、被レ擬二右府殿一、右府殿賜二権中納言一」
※経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後「二万の戦隊長鎗を擬し大剣を揮ひ鬨を作て殺到せり」
もどかし・い【擬】
① 非難すべきである。気にくわない。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「かたちよりはじめ、交らひたるさまなど、もどかしきところなく」
② 思うようにならないで心がいらだっている。はがゆい。じれったい。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「中将、いでやもどかしうこそあれ〈略〉と聞ゆるほどに」
もどかし‐が・る
〘他ラ五(四)〙
もどかし‐げ
〘形動〙
もどかし‐さ
〘名〙
まねぎ・る【擬】
〘他ラ四〙 ある形をまねる。かたどる。なぞらえる。
※大日経治安二年点(1022)三「手を擬(マネキリ)て上さまに指す」
ぎ‐・す【擬】
〘他サ変〙 ⇒ぎする(擬)
もどか
し【擬】
〘形シク〙 ⇒もどかしい(擬)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報