放蕩息子(読み)ほうとうむすこ(英語表記)Prodigal Son
Verlorener Sohn[ドイツ]
Enfant prodigue[フランス]

改訂新版 世界大百科事典 「放蕩息子」の意味・わかりやすい解説

放蕩息子 (ほうとうむすこ)
Prodigal Son
Verlorener Sohn[ドイツ]
Enfant prodigue[フランス]

新約聖書ルカによる福音書》(15:11~32)に記された,イエス・キリストによる譬(たとえ)話。ある人に2人の息子がいた。財産を分けてもらった弟は,遠国に出かけ放蕩のあげくに惨めな豚飼いにまで落ちたが,ついに回心して父のもとに帰り許しを乞うた。父は不憫に思い彼を迎え入れ祝宴を開く。これを見ていた兄は父の寛大な態度に抗議するが,父は〈お前はいつもわたしのそばにいて,わたしの物はみんなお前のものだ。しかし,弟はいったん死んだのち生き返ったのだから,喜び祝わずにおられないではないか〉と言った。キリストはこの譬話によって,罪ある者でも悔い改めれば神の限りない恩寵によって救われると諭(さと)した。

 図像化されたものとしては11世紀のビザンティンの写本画に初期の例が見られ,西欧でも中世末期以降主題とされ,弟が回心して父のもとに帰ろうとする場面や父が彼を温かく迎え入れる場面などが多くあらわされた。また,聖書記述には必ずしも忠実ではないが,18世紀初めの風俗を取り入れたホガースの風刺的連作版画《放蕩息子一代記A Rake's Progress》(1735)も知られる。ストラビンスキーは,この連作版画をもとに同名オペラ(1951)を作曲している。
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デジタル大辞泉プラス 「放蕩息子」の解説

放蕩息子

ロシア出身、アメリカで活躍した振付家ジョージ・バランシンによるバレエ(1929)。原題《Le fils prodigue》。初演はディアギレフ率いるバレエ・リュス音楽プロコフィエフ。初演の舞台美術はジョルジュ・ルオーが手掛けた。

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