教科書事件(読み)きょうかしょじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「教科書事件」の意味・わかりやすい解説

教科書事件
きょうかしょじけん

1982年と 1986年に日本の歴史教科書をめぐって生じた日中間の外交事件。1983年から高等学校で使用される歴史教科書の検定(→教科書検定制度)において,文部省が,「華北侵略」を「華北進出」に,「中国への全面侵略」を「中国への全面進攻」に修正させ,南京大虐殺発端を「中国軍の激しい抵抗にあい,日本軍の損害も多く,これに激昂した日本軍は多数の中国軍民を殺害した」と変更させたと,1982年6月に報じられた。これはのちに誤報と判明したが,中国はこの歴史教科書検定の報道をうけて「歴史の真相を歪曲するものであり,同意できない」と抗議し,文部省の検定した教科書の誤りを正すよう日本政府に要求した。この問題は同 1982年9月以後,日本側が教科書を修正するかたち決着をみた。また 1986年,中国は「日本を守る国民会議」が編集した高等学校用教科書『新編日本史』の多くの記述が歴史の事実に反するとして日本に抗議し,修正を求めた。中曽根康弘内閣総理大臣は文部省に再検討を要請し,教科書の修正によって問題の発展は回避された。

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