文荷(読み)フミニナイ

デジタル大辞泉 「文荷」の意味・読み・例文・類語

ふみにない〔ふみになひ〕【文荷】

狂言主人恋文を持たされた太郎冠者次郎冠者が、竹に結びつけて担いでいくうちに、文を読もうと争い、破ってしまう。

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精選版 日本国語大辞典 「文荷」の意味・読み・例文・類語

ふみにないふみになひ【文荷】

  1. 狂言。各流。主人から稚児(ちご)に文を届けるように言いつけられた太郎冠者・次郎冠者は、竹の棒に結びつけて肩にかついでいくうち重さに不審を抱き、開いて読み、その重さは恋文の故と合点するが、二人が引っぱり合ううち破れてしまう。二人の帰りが遅いので主人が見に来ると、二人が裂けた文を扇であおいで笑い興じているので腹を立てる。「文さき」とも。「狂言記(続)」では「荷文(にないぶみ)」。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文荷」の意味・わかりやすい解説

文荷
ふみにない

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人が太郎冠者(シテ)と次郎冠者に衆道の相手(少年)への手紙を持って行かせる。2人は交代で手紙を持ちあって行くが、やがて竹に結び付けて2人で担ぎ、能『恋重荷(こいのおもに)』の一節を謡いながらすっかり遊び気分。調子にのって手紙を開いてみると、案の定、恋文である。文面をひやかしながら互いに奪いあって読むうちに、手紙は真っ二つ。破れた手紙を届けるわけにはいくまいと思案した2人、風の便りということばに事寄せて、「風のたよりに伝え届けかし」と謡いながら破れた手紙を扇であおぐ。迎えにきた主人がそれをみつけ、2人を追い込む。『天正(てんしょう)狂言本』では、手紙の届け先を花子という女性にしており、古くはかならずしも男色を扱った作品ではなかったらしい。1枚の文が、洒落(しゃれ)っ気たっぷりに次から次と思わぬ展開を生み出していく。

[油谷光雄]

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