狂言の曲名。女狂言。大蔵,和泉両流にある。洛外に住むある男は,先年東国に下ったとき美濃国野上(のがみ)の宿で花子という女となじみになった。花子は都の北白川に宿をとり,たびたび男に手紙を寄こすが,妻の目が光っているので会うこともままならない。ある夜,妻には持仏堂で一夜の座禅をすると偽り,太郎冠者に座禅衾(ざぜんぶすま)をかぶせて身代りとし,花子のもとへかけつける。やがて夫を見舞いにきた妻は,衾を取りのけて正体を見破り,太郎冠者に入れ替わって自分が衾をかぶり夫の帰りを待機する。男は朝帰りをし,妻が衾をかぶっているとも知らず,花子との逢瀬の嬉しさ,別れの辛さ,妻の悪口などを語って聞かせ,衾を取りのけると,妻の嫉妬と怒りに燃えた顔が現れる。肝をつぶし逃げまどう男を妻が追い回す。登場は夫,妻,太郎冠者の3人で,夫がシテ。内容的には浮気が露見した男のファルスだが,後ジテの仕方話を微に入り細をうがって小歌節で表現するところに重点がおかれ,演出的・技術的には格式の高い演目となっていて,両流ともに《釣狐》と並ぶ習(ならい)に扱っている。1910年,《身替座禅(みがわりざぜん)》の名で,岡村柿紅が脚色し6世尾上菊五郎が初演して以来,歌舞伎舞踊でも人気曲となっている。
執筆者:羽田 昶
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狂言の曲名。女狂言。洛外(らくがい)に住む男(シテ)は、先年美濃(みの)国野上(のがみ)の宿でなじみになった花子が上京したので、嫉妬(しっと)深い妻をだまして会いに行こうと、近ごろ夢見が悪いから諸国行脚(あんぎゃ)に出たいというが許されず、一夜だけ邸内の持仏堂に籠(こも)ることを承諾させるのがやっとである。そこで、妻が見にきたときの用心に、嫌がる太郎冠者(かじゃ)に座禅衾(ざぜんぶすま)をかぶせて身代りにし、喜び勇んで出かけて行く。案(あん)の定(じょう)見舞いにきた妻は、窮屈そうな姿に同情し無理に衾をとり冠者と知って腹をたてるが、こんどは自分が衾をかぶり、夫の帰りを待ち受ける。そうとは知らず、夢見心地で帰宅した夫は、顔を見ては恥ずかしいからそのまま聞けと、花子の宿所を訪ねてから後朝(きぬぎぬ)の別れまでの一部始終を、妻の悪口まで交えて小歌で長々と語り尽くす。さて衾をとって驚く夫を妻が追い込む。
濃艶(のうえん)な内容を上品に表現しなければならないところにむずかしさがあり、長々と舞いながら謡うことは体力的にも容易でないので、秘曲として扱われている。これを歌舞伎舞踊化したのが岡村柿紅(しこう)作『身替座禅(みがわりざぜん)』(常磐津(ときわず)・長唄(ながうた)掛合い)で、6世尾上(おのえ)菊五郎が1910年(明治43)東京・市村座で初演、家の芸「新古演劇十種」の一つに加えた。
[小林 責]
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…仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。…
…つまり都市や農村に住む民衆にとってこじきとは,生活圏の外から訪れてくる,なかばの期待となかばの恐れとをもって迎えるべき神聖な旅人でもあったのである。【真野 俊和】
[中国]
中国ではこじきは一般に〈乞丐(きつかい)〉と呼ばれ,また仏教で俗に施物を乞うことを〈教化〉といったことから,転じて〈叫化子〉あるいは〈叫花子〉〈花子〉とも称された。貴賤の観念からすると,〈娼,優,隷,卒〉すなわち娼妓,俳優,小役人,兵卒が賤流とされたのに対して,こじきは社会的にその範疇にはいらないが,決して敬われる存在ではなかった。…
…そのために交尾期になると雌の周辺には,数匹の雄がある距離をおいて集まり,ひたすらその機会を待つ。
[獲物のとり方]
クモが餌をとらえる方法も,ふつうの網でとるもののほか,池の端で2本の前肢で水面をたたき,浮上してくる小魚をつめでひっかけて釣るハシリグモDolomedes triton,網を4本の前肢でささえ,下を通る虫の上にぽいとかぶせるメダマグモDinopis spinosa,粘球を糸の先にぶら下げ,これをぐるぐる回して,通過する虫に投げかけるナゲナワグモMastophora bisaccata,花の上に脚を広げて静止し,虫が触ってもじっとしていて,虫が安心してみつを吸い始めると,がばっととらえるハナグモMisumena tricuspidatusなどのように多種多様である。
[クモの巣]
クモの種類が異なれば,網の形も異なる。…
※「花子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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