狂言本(読み)きょうげんぼん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

狂言本
きょうげんぼん

狂言の台本。普通は伝書,または正本,和泉流では『六義 (りくぎ) 』ともいう。狂言は長い間,口伝で伝えられ,現存最古の詞章書留には,天正6 (1578) 年の奥書のある『天正狂言本』があるが,筋書程度で流儀は未詳。大蔵流は寛永 19 (1642) 年筆録の 13世家元の『虎明本』,寛政4 (1792) 年の 19世家元の『虎寛本』以降,和泉流は慶長 (1600頃) の『天理本』以降,鷺流は元禄末 (1700頃) 分家伝右衛門保教の『筆録』以降のものである。江戸時代にはすべて他見を許さぬ秘書として伝えられ,印刷流布されたのは明治以後であり,各流現行のものは一部を除いてなお未刊のものが多い。

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世界大百科事典 第2版の解説

きょうげんぼん【狂言本】

歌舞伎狂言の梗概を物語風に記した書籍の総称。挿絵入りであるところから〈絵入(えいり)狂言本〉ともいう。狂言本は,歌舞伎の最初の充実期ともいうべき貞享・元禄期(1684‐1704)に刊行され,流行し,1739年(元文4)の《けいせいあらし山》まで京坂と江戸で約200種が出版されている。その形式・体裁は,京坂と江戸,また出版年次によって相違があるが,一般には縦本の半紙本形式で,表紙には左方に狂言名を記した外題簽,その右に名題・座元名および主演級の役者4名ほどを記した方簽を張り,見返しには役人替名が連記してある。

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精選版 日本国語大辞典の解説

きょうげん‐ぼん キャウゲン‥【狂言本】

〘名〙
① 歌舞伎狂言の内容を草子風にまとめた絵入細字本。せりふの集録には努めているが、筋書風にまとめてあり、脚本そのものではない。十丁前後の半紙本で元祿(一六八八‐一七〇四)から享保(一七一六‐三六)にかけて歌舞伎上演の際出版された。役者の舞台姿を絵に入れてあるところから、絵入狂言本ともいう。
② 歌舞伎狂言の台帳、台本。
※役者論語(1776)続耳塵集「狂言本とてくわしく書事は、金子一高よりはじまりける也」
③ 歌舞伎に関する書物の総称。江戸中期以後、いうようになった。
※黄表紙・御存商売物(1782)中「もしへ、子どものきゃうげんぼんをおよびなんし」

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