断面積の法則(読み)だんめんせきのほうそく(その他表記)area rule

改訂新版 世界大百科事典 「断面積の法則」の意味・わかりやすい解説

断面積の法則 (だんめんせきのほうそく)
area rule

エリアルールともいう。飛行機が音速を超えて飛行するときに発生する造波抵抗機体の形状,とくにその断面積分布の関係をあきらかにした法則NACA(現在のNASAナサ))のホイットカムRichard Whitcombが1952年に発表した。この法則の発見によって造波抵抗を減少させることができ,超音速飛行が容易になった。飛行機が高速になり,機体の周囲の気流が音速を超えると,そこに衝撃波が発生し,大きな造波抵抗が生ずる。衝撃波の発生を,より高速になるまで遅らせたり,またそれに伴う造波抵抗を減らす手段として,後退翼三角翼が発見されていたが,それだけではまだまだ音速を超えて飛ぶときに大きな造波抵抗が発生して超音速飛行を不可能にしていた。ホイットカムは,実験によって飛行機のように翼をもつ飛行体の造波抵抗が,それと同じ断面積をもつ弾丸のような回転体の造波抵抗に等しいことを確認した。いいかえると,在来のように流線形をした胴体主翼を組み合わせた場合には,主翼の部分で断面積が急増することになり,それが造波抵抗を大きくしていることがわかったのである。もし主翼と胴体の断面積分布を理想回転体に合わせることができれば,造波抵抗は小さくなり,その抵抗値の推算精度も高くなる。このためには,主翼と重なる部分の胴体を細くしてやればよい。いわゆるコカ・コーラのびん形という胴体である(図)。この法則は当時どうしても音速を超えることができなかったアメリカの全天候戦闘機コンベアF102に適用され,胴体を再設計したF102Aがマッハ1.25の超音速飛行に成功して一躍有名になった。その後ホイットカムは,この法則の断面積をマッハコーン(衝撃波面が形成される円錐面)に沿って算出することとし,超音速域の任意の速度で抵抗減少をはかれるようにした。これを超音速エリアルールと呼んでいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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