日本大百科全書(ニッポニカ) 「旅客船事業」の意味・わかりやすい解説
旅客船事業
りょかくせんじぎょう
海上において船舶により人または物の運送をする事業(船舶運航事業)で、海上運送法の適用を受ける事業。旅客船事業は定期航路事業と不定期航路事業に分類され、定期航路事業は一般旅客定期航路事業と特定旅客定期航路事業に分類される。いわゆるフェリー事業や13人以上の定員をもつ船舶が就航する離島航路は、一般旅客定期航路事業に該当する。
離島航路については、離島の過疎化に伴って経営が苦しくなり、航路の廃止や統合が相次いでいる。そのため国や自治体が補助することによって経営を維持している場合が多い。フェリー事業は、高速道路の休日料金割引制度や、本州四国連絡橋の高速道路料金の値下げなどの環境の変化を受けて、離島航路と同じく厳しい経営状態に置かれている。
その一方で、観光客にターゲットを絞ったクルーズ船や豪華客船の導入によって、新たなビジネスチャンスを生み出そうとする試みもある。しかし、日本船籍のクルーズ船では法律上カジノが禁止されていたり、カボタージュ(自国の二地点間の輸送に外国船が従事できないとする規則)の問題があるために、その発展には制約が課されている。
[竹内健蔵]
『杉山武彦監修、竹内健蔵・根本敏則・山内弘隆編『交通市場と社会資本の経済学』(2010・有斐閣)』