日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェリーボート」の意味・わかりやすい解説
フェリーボート
ふぇりーぼーと
ferry boat
渡船ともいう。河川や港内・湾内などの短い水路の渡船から、内海・沿岸などのやや長い航路を旅客・貨物・車両などを定期的に輸送する船までの総称。渡船は日本でも利根(とね)川や琵琶(びわ)湖などに運航され、アメリカのミシシッピ川、ドイツのライン川など世界の多くの河川や湖沼、海峡や離島などで対岸との交通に用いられている。やや長い航路では下関(しものせき)と韓国の釜山(ふざん/プサン)、スウェーデンとデンマークなどの隣接国間や、北海道―京浜―九州間の沿岸に就航する長距離フェリーなど、利用範囲も広く、また古くから使われている。
用途や航行水域によって、河川渡船、港内渡船、沿岸フェリー、鉄道連絡船、カーフェリーなどがあり、それぞれの目的に応じた船型、設備、航海性能を備えている。原始的な櫓櫂(ろかい)による小型から、パドルホイール(外車)船、通常のスクリュープロペラ船、水中翼船やホバークラフトなど、種類は多様である。
[岩井 聰]
フェリー輸送
日本では、渡船、旅客船、連絡船などが発達していたが、1960年代以後のモータリゼーションのなかでカーフェリーが急増し、フェリーの代名詞となった。日本最初のカーフェリーは1944年(昭和19)鹿児島―桜島間に就航したが、1950年代に瀬戸内海に普及し、さらに1960年代に長距離フェリーが登場し、大型化、豪華船化した。旅客定期航路事業としての旅客フェリーがほとんどであるが、自動車航送貨物定期航路事業としての貨物フェリーもある。トラックがカーフェリーを利用する場合、「動く道路」として人件費や燃料費の節約、混雑回避=輸送時間の短縮などの効果がある。2007年(平成19)の旅客航路事業者は964業者、1659航路、2385隻、136万総トンであるが、そのうちフェリーは158事業者、187航路、366隻、118万総トンである。そのほかに、日本と韓国、中国そしてロシアとの航路に、国内外の会社の外航フェリーが就航している。
[篠原陽一]