日本大百科全書(ニッポニカ) 「日ロ漁業協定」の意味・わかりやすい解説
日ロ漁業協定
にちろぎょぎょうきょうてい
北方領土周辺地域での日本漁船の操業については、従来ロシア側から銃撃を受けるなどの問題があり、問題解決のため、入漁料支払い形式での漁業協定の締結交渉が、1995年(平成7)3月以来始められていたが、1997年末に日ロ間で交渉がまとまり、1998年2月21日に日ロ漁業協定が署名され、5月21日に口上書の交換によって発効した。同協定には、ロシア側が自国領海だと主張している海域も含まれているが、北方領土の領有権問題への波及を避けるため、通常の漁業協定には含まれている当該海域での「違法操業についての取り締まり」の規定は除かれている。また協定には、日本の漁業者が毎年、資源保護への資金協力の名目で1000万~2000万円を支払うほか、北海道水産会が1500万円相当の機材をロシア側に供与する約束が含まれている。入漁料支払い形式による操業は、従来、歯舞(はぼまい)群島の貝殻島のコンブ漁について例外的に認められていた。ロシア側が当初主張していた当該海域での違法操業のロシア法での取り締まりの主張を引っ込めたのは、日本が慎重な姿勢をとっている北方四島での共同事業を推進させたいとの背景もあるのではないかと推測されている。
[宮崎繁樹]