日本大百科全書(ニッポニカ) 「昼間人口・夜間人口」の意味・わかりやすい解説
昼間人口・夜間人口
ちゅうかんじんこうやかんじんこう
ある地域に常住する人口が夜間人口であり、昼間だけ現存する人口が昼間人口である。後者には、そこで働く従業者、通学する学生をはじめ、旅行・商用・買い物などで一時的に現存する人も含まれるが、国勢調査などでは、夜間人口の従業地・通学地を調べることにより、ある地域の昼間人口を推計する方法がとられるので、一時的に現存する人口は含まれない。
一般に都市では昼間人口が夜間人口を上回り、その近傍では逆になるが、これは産業化・都市化に必然的に伴う現象である。すなわち、産業化は、農民・小商工業者などの家業的個人業主および家族従業者が近代的労使関係に組み込まれていく過程ともいえるが、これは個人生活の場と生産活動の場を必然的に分離する。また産業化は、人口の都市集中、すなわち都市化をもたらすが、都市はそのなかに、工業・商業・娯楽・文教そして住居などの同質的機能をもつ諸地域を集積・集中する。こうして生活の場から生産・教育の場へと、夜間人口→昼間人口の移動、すなわち人口流動がおこる。都市の拡大と都心部の地価上昇は、住宅を郊外に押し出して、人口流動はますます激しくなる。近年、職住接近がいわれるが、この傾向に歯止めをかけるには至っていない。
[一杉哲也]